水増しした数字を垂れ流した朝日新聞

この登録率をめぐっては、10月7日に朝日新聞 が「インボイス、登録事業者まだ4割弱」という見出しの記事を公開したが、騙されていはいけない。

筆者がツイートで指摘した問題点を改めて説明すると、この記事では4割という登録率を報じる際、分母を「消費税の納税義務がある約300万事業者(=課税事業者)」にあえて限定している。

しかし、先ほども説明した通りインボイスの登録対象は免税事業者(個人事業主、人格なき社団等)も含むため、確実に1000万者を超える。

インボイスに登録すべきかで最も悩むのは実質的増税となる免税事業者であるにもかかわらず、分母の対象を課税事業者に狭めて、登録率が大きくなるように報じているのだ。

この記事では、約300万者を分母にして4割という答えを導いたのだから、当然ながら分子には120万者 前後の数値があったはずだ。

この120万者という数字の実態を確認するため、筆者が国税庁の事業者公表サイトで今年9月末時点の登録済み事業者の件数を確認したところ、確かに総数は1,205,091者であった。分子にはこの数字を採用したと見て間違いない。

だが、この数字は、多数の免税事業者が存在する「人格のない社団等」「個人事業主」も含んでいる。

*1,205,091者の正確な内訳は法人961,923件、人格のない社団等1,375件、個人事業主241,793件

【開始まで1年】インボイス登録を焦るべきではない2つの理由_2

つまり、分母は課税事業者に限定した一方、分子は課税事業者と免税事業者の両方を含めて、ここでも登録率が多く見えるように報じているのだ。

条件の異なる数値を割り算して、実態の「1割」から大きくかけ離れた「4割」に水増しして報じてしまったことになる。単に記者が勉強不足だった可能性もあるが、朝日新聞として責任を持って訂正すべき重大な誤りと言える。

そこで、記事を書いた 記者に筆者自ら真意を問い合わせたが、残念ながら期日までに回答はなかった。想像するに、登録の心理的ハードルが最も高い免税事業者(実際は今回の計算対象に含まれていない)に対して「全体の4割も登録しているなら登録すべきかな」とミスリードする狙いがあったのではないか。