グラミチの歴史と、創業者の発明

昨今のキャンプ・アウトドアブームに乗り、絶好調のグラミチは、日本では1990年代初頭から注目されはじめたブランドだ。
当時、ビームスやオッシュマンズといったセレクトショップが、街で着る“アウトドアミックススタイル”を提唱。
それまでの日本ではなじみのなかった海外の一流アウトドアブランドアイテムを買い入れて店頭で展開し、ブームを牽引していた。
グラミチはその筆頭株として、その頃から注目されるようになった。

以来、グラミチはこの日本で、タウンユースのカジュアルウェアとして定着。
そしてここ数年間で大きく盛り上がっているキャンプ・アウトドアのトレンドの中、欠かすことのできない重要ブランドとして存在感がいや増している。
僕のように1990年代の最初のブームのころに若者だった世代の人は、若干の懐かしさ混じりで、また、その子供世代である今のティーンエイジャーは、メイド・イン・USAの本格アウトドアブランドとして一目置いているようなのである。

では、グラミチとはどんなブランドか?

創業者はマイク・グラハム。“グラミチ”というのは、彼のニックネームをそのままブランド名としたものだ。
1960~70年代のアメリカ・ヨセミテ国立公園で活躍した“伝説的ロッククライマー”のマイク・グラハムは、1982年、盟友のドン・ラブとともにこのブランドを創業した。

マイクが活躍していた当時は、ロッククライミング専用のウェアが存在せず、マイクも一般的な登山用ジャージとパーカという出で立ちで、垂直に切り立つ険しい岩壁に挑んでいたという。
しかし彼はクライミングテクニックを極めるうちに、難敵の岸壁に挑むためには特別なウェアが必要だという思いを強くしていく。
そこで、自分自身が納得できる新しいコンセプトのウェア開発をスタートした。

グラミチのパンツでもっとも際立つ特徴は、180度まで完全に脚を開くために施されている“ガゼットクロッチ”というディテールだ。
股部分にあしらわれたマチのことで、これがあるおかげでロッククライミング時に足場を求めて思い切り開脚してもつっぱらず、ビリっと破ける心配もない。
ガゼットクロッチがあると、ロッククライミング以外のシチュエーションでもとても足が動きやすくなるため、現在では様々な他のアウトドアブランドのパンツにも採用されているので、ご存じの方も多いだろう。
その発明者こそが、グラミチことマイク・グラハムだったのだ。

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この構造が穿きやすさを生む

マイクがこの画期的な機能を思いついたきっかけについては、ちょっと面白いエピソードが残されている。

大のカンフー映画ファンであったマイクは、ある日、いつものように楽しんでいた映画の中で、見事なハイキックを決めるブルース・リーの姿を見て考えこむ。
どうやったらあんなに見事に脚を開けるのだろうか……。あそこまで開脚できたら、ロッククライミングもやりやすいぞ……。そうか、カンフーパンツか! どういう構造になっているのだろう……?
こうして、ガゼットクロッチの開発につながったのだそうだ。