キューブリックの原案をスピルバーグが映画化
『A.I.』(2001)A.I. Artificial Intelligence 上映時間:2時間26分/アメリカ

ロボットの恋心、自尊心、人間との触れ合い……切なすぎるAI映画5選_2
右からデイヴィッド(ハーレイ・ジョエル・オスメント)と、共に旅をするセクシーなジョー(ジュード・ロウ)
Everett Collection/アフロ

コンピュータが“感情”を持つ恐ろしさを描いた映画といえば、スタンリー・キューブリックの名作『2001年宇宙の旅』(1968)。実は彼はもう1本、AIが感情を持つ未来の物語の映画化を企画し、果たせぬまま亡くなった。そのキューブリックの原案をスティーヴン・スピルバーグ監督が映画化したのが、その名もずばりの『A.I.』(2001)だ。

人間と同じ愛情を持つ少年型ロボットとして設計されたデイヴィッド(ハーレイ・ジョエル・オスメント)は、不治の病に侵されている息子・マーティンを冷凍保存しているロボット製造会社社員ヘンリーと、プログラマーの妻モニカ夫妻に引き取られる。モニカはデイヴィッドに対して、母としての自分を愛するようにプログラムする。だが、マーティンが奇跡的に病を克服して目を覚まし家に戻ると、デイビッドは森に捨てられてしまう。

母恋しさを胸に放浪するデイヴィッドは、途中でセックス・ロボットのジョー(ジュード・ロウ)と知り合って旅を続け、ピノキオのように人間の男の子になる夢を抱きつつ意識を失う(機能停止する)。やがて2000年が経ち……という寓話的物語。

キューブリックは、『2001年宇宙の旅』の技術コンサルタントとして招聘した(が、断られた)ほどの手塚治虫ファンで、『A.I.』のアイディアの源泉が『鉄腕アトム』にあることは疑う余地がない。

アトムは事故で息子トビオを失った天馬博士が、息子の身代わりとして作ったロボット。いつまでたっても成長しない(ロボットなので当たり前だが)ことに腹を立てた天馬博士によって森に捨てられてしまい、サーカスに拾われて見世物になっていたところを、お茶の水博士に発見されたという背景がある。

デイヴィッドもまた、息子を失った天才科学者ホビー教授(ウィリアム・ハート)が、死んだ息子そっくりなロボットとして設計したという設定。母親の愛を求め続けるロボットというのが、実に切ない物語だ。