メディア活動を通して訴えたいのは、“カテゴライズされない世界”

――雑誌だけでなくウェブメディアも始められるそうですが、そうした発信によって、萌茶さんが世の中に期待したい変化を教えてください。

大きなところから話すと、まず法的整備は当然の課題です。でも、それよりもまず個人レベルの意識や姿勢の変革が大事。それができれば、行政などにも変化が起こるのではないかと思います。

今よりもっと幅広い選択肢を社会全体で用意することが重要です。たとえば男の子だからこのおもちゃ、女の子だからこのおもちゃと決めつけるのではなく、自由に選ばせるということ。そういう教育をするだけでも、考え方はずっと柔軟になるのではないかなと思います。

「理解のない人も排除はしない」LGBTQ+向けファッション誌『WaWian』の志と存在意義_5

――教育は大事ですよね。まだまだ日本の学校などは意識が低いようですが。

特に思春期の中学、高校では、先生方にも正しい知識を身に付けてもらって、正しい教育をおこってもらいたいです。思春期の頃は、いじめなどが起こりやすいので、教員の正しい知識と教育が必要不可欠です。『WaWian』を図書室に置いてもらうだけでも、考えるきっかけになるのではないかと思います。

――ジェンダーレスの制服なんかも、もっと広がっていいですよね。

制服を選択制にしたり、ジェンダーフリーのトイレを設けたり、そういう小さなところから少しずつ始めていけば、いずれ世の中の雰囲気は変わってくると思います。

――「こうじゃなければいけない」と、人を上から決めつけるような社会は嫌ですよね。

そうですね。そのために雑誌の内容も、なるべく排他的にならないように気をつけています。たとえば、男性のメイクに対して、気持ち悪いという否定的な意見を持つ人がいることも承知しています。そのうえで、そうした批判をする人にも、こちらから歩みよって理解し、誌面に反映させることも大切だと思っていて。

――LGBTQ+に理解のない人も排除しないということですか? それはなかなか大変そうですが。

もちろんまだ模索中ですが、そういう大きな目標を持っています。人って未知なことに直面すると、頭がフリーズしたり、ときには恐怖心や抵抗感を持ったりすると思うんですけど、そこで考えるのをやめず、理解しようとし続ける姿勢ってすごく大切だと思うんです。多様性を尊重してカテゴライズされない世界を目指し、互いを思い合う社会にしようと、強く訴えていきたいと思っています。

――「自分は関係ない」と思っている人も多そうですが、その点はどうでしょう?

性自認というのは、ときに流動的になることがあります。特にSNSが盛り上がってきて世界中の様々な方が“自分”を発信するようになってからは、その人になってみたいという憧れから、女装やメイク、コスプレなどをしてみて、自分の性に揺らぎを感じる人も多いようです。SOGIE(編集部注Sexual Orientation〔性的指向〕、Gender Identity〔性自認〕、Gender Expression〔性表現〕のこと)という言葉があるように、LGBTQ+なんて他人事と思っている方にも、性の揺らぎが出てくる可能性があるということを知ってほしいです。『WaWian』は、性の揺らぎが出てきて自分は何者なのか分からなくなってしまった人に向けて作った雑誌でもあるんです。

「ひとりひとりが思いっきり羽を伸ばして生きていけるような世の中にしたい」と語る、編集長・萌茶さん。生まれたばかりの『WaWian』は、そんな萌茶さんの思いがたっぷりと詰まった雑誌なのだ。