「8~9割の確率で家庭に問題がある」
法務省の統計によれば、少年院に入っている女子の4割、男子の3割弱に虐待を受けた経験があるとされている。
近年、脳科学の研究から虐待は子供の脳の発達を阻害したり、認知をゆがめたりすることが明らかになっている。愛着障害、気分障害、パーソナリティ障害、パニック障害などにもなりやすい。
こうした子供たちは、虐待によって負った特性から大きな生きづらさを感じる傾向にある。年齢が上がるにつれ、それは自傷、摂食障害、万引き、暴行、売春といった問題行動につながり、中学生~高校生くらいの年齢で非行が顕在化するのだ。
ここに虐待と非行との因果関係がある。非行少年に虐待経験者が多いのはそのためだ。
ただし、少年院の法務教官に話を聞くと、この統計は現実より少なく出ているのではないかという指摘する人が多い。女子少年院に勤務する法務教官の言葉である。
「統計では虐待は3~4割くらいですが、実際に話を聞いていると、8~9割の確率で家庭に問題があると感じています。家庭のゆがみが、そのまま少年たちのゆがみに直結している。問題は、家庭のゆがみの中には虐待のカテゴリに入るものと入らないものとがあることです」