画太郎マンガを知らない子どもが熱狂
漫☆画太郎読者が笑本おかしばなしを読んで真っ先に感じるのは、昔話との相性の良さだろう。漫☆画太郎は『珍遊記』や『星の王子様』『罪と罰』などのマンガでもリメイク、本歌取り的な作品を描いてきた作家であり、絵本での古典アレンジもお手のもの感がある。
昔ばなし研究者の小澤俊雄氏は「昔話は3回繰り返す」「繰り返しのリズムを子どもたちは愛する」といったことを述べているが、もともと画太郎作品では反復で笑いを取ってきた。たとえば人を殴ったときの「ぶべら!!!」や、他人の顔めがけての下痢噴射が代表的だ。笑本では「おじいさんとおばあさんが すんでい……」「ました!!!」(おじいさんとおばあさんの顔アップの絵)、「おばあさんは かわへ せんたくに いき……」「ました!!!」(おばあさんの顔アップ)と、「ました!!!」(顔アップ)などの新たな反復表現を発明した。
こうした特徴を持つガタロー☆マンの笑本シリーズは、刊行前こそ「子どもに読ませて大丈夫なのか」といぶかしむ声があった。だが、蓋を開けると予想をはるかに超える大反響となる。
「『ももたろう』発売前は画太郎先生のファンである40~50代がコア読者なのかなと思っていましたが、発売後にテレビ番組などでご紹介いただき、また、『子どもが喜ぶ』という評判が広まったことで、コミックス売場だけではなく絵本コーナーにも徐々に置かれるようになりました」(誠文堂新光社・渡会拓哉氏)
2021年末に発表された「第14回MOE絵本屋さん大賞2021」では『ももたろう』が新人賞第1位を受賞。同賞は絵本屋さん3000人が「今年もっともおすすめしたい絵本」を選んだもので、これによって「子どもに読ませても大丈夫」という評価が確立された。
「第1弾の『ももたろう』の刊行以降、SNSなどの反響を受けて、子どもたちが楽しんでくれていることをガタロー先生は実感されています。編集している私としても、出版を重ねるごとに『子どもに笑顔になってほしい』という想いが強くなりました。先生も子どもたちに寄り添い、真摯に向き合って制作されているなと、送られてくるネームやメールを見て感じています。おそらく絵本作家デビュー当時にガタロー先生が構想していた作品とはまったく違う絵本になっていると思います。『ももたろう』『おおきなかぶ~』『てぶ~くろ』というラインナップになったのは、ガタロー先生にとっても予想外の展開なのではないかなと」(穴水氏)