アートの楽しみ方
——難しい絵、たとえば現代美術はどうやって楽しむのがいいでしょうか?
伊野 まず、現代美術は投機の対象になっていますよね。値段がめっちゃ高い作品があるのはそのせいです。イラストレーターじゃなくて現代美術作家になった方が儲かったかな……でもどうやってなるのかがわからなかった(笑)。
伸坊 昔は売れなかったんです。でも赤瀬川(原平)さんがやってた頃はものすごく面白かった。今まで誰もやってなかったようなことをどんどんやってたんだから。
伊野 今と違って、まったくお金にならないものでしたね。
伸坊 そう、日本じゃね。現代美術の本場はアメリカだってなって、つまりマーケットがあるという意味だけど。専門家が専門家を相手にしている芸術っていうかね。
伊野 お茶の世界と似てるんじゃないですかね。見せ方とか。
伸坊 うんうん。利用価値がある、そういう茶道みたいなシステムがなければ、なんでこんな茶碗がって話になる。現代美術についても、それを面白がったり、蘊蓄を語ったり、そういう一部の社会があるから、価値があるわけだよね。
伊野 現代美術では作品に至る「文脈」ってものが重要視されてて、評価されるポイントでもありますよね。そういうものがわからないといけないと思うから、余計にむつかしく思っちゃう。
伸坊 確かに理屈っぽいところはある。別にたいしたことじゃないけどね。
伊野 「絵は意味がわかれば面白くなる」っていう考えが根強くあります。でも僕は、意味は一番最後でいいって思うんですよ。そんな見方だと絵は一生わかんないかもしれない。まずは意味や言葉から離れて見てみる事が大事。意味は脱衣所で脱いで、裸でお風呂に入って「あ〜いい湯だな」って。お湯の成分や効能はあとでいいでしょ? 絵もそういうふうに見てほしいな。
伸坊 うまくまとまった(笑)。