クルケシをネットオークションで落札

こうしてあらためて思い出してみると、大して知恵がはたらくわけでもなかった小学生の自分たちが、よくこんなルールを考え、秩序あるゲームを編み出していたな、と我ながら感心する。試行錯誤を繰り返して研ぎ澄ました、紛れもない「僕らのクルマ遊び」だった。

クルケシの改造は暗黙的に禁止されていたが、車体の底面に合わせてタイヤの下半分をカッターで切り取るという方法だけは許可されていた。

これにより、たとえばレースにおいては、スピンさせるように弾いてコースアウトしにくい安定した水平移動が可能になるが、反面、立体的に弾きにくいのでショートカットが制限されたりと、機能のトレードオフを迫られた。元に戻せないので慎重な判断が必要とされる。今、考えても実に奥が深いではないか。

晴れた日は外でクルケシレース。
雨の日は室内でクルケシサッカー。

男子が大好きなスーパーカーの形をした、たかが消しゴムは、私たちが小学生だった数年という時間を豊かにしてくれた。だが、その後中学生になって放課後は部活動に勤しむように。クルケシをぎっしりと集めた箱を開くこともなくなり、いつしかその箱がどこにいったのかもわからなくなった。

気づけば、実物のクルマを求める歳になって、更に時が経ち、今はクルケシのコラムを書いている。人生は実に不思議だ。

そういえば何年か前、今は名古屋に住むKくんから「クルケシ、どっかで手に入らないか?」と電話があった。二人の息子に与え、一緒に遊びたいのだと言う。知り合いの駄菓子屋に聞いても手に入れる方法が見つからなかったので、今回はネットオークションで購入した。

わが青春の「スーパーカー消しゴム」は今も手に入るのか?_05

4個詰め(当時価格20円)が45袋入った1箱が10000円ほどだったので、価格は当時のおよそ11倍。箱にNo50と明記されていることから、50シリーズは展開されているようだ。

わが青春の「スーパーカー消しゴム」は今も手に入るのか?_06
1袋4個詰めで1シリーズ全12種類。僕は6袋(24個)でコンプリートできた

今回、入手したクルケシは、Kくんが、彼の息子たちと、新たなクルケシ遊びができるように送ってあげようと思う。

駄菓子のコラムを書いていて思うのは、駄菓子屋で売られていたモノたちは、子ども時代の記憶の引き出しを開ける鍵となるだけでなく、こうして読者の皆さんとそれぞれの思い出を共有し、自分のこどもに伝える手段にもなってくれているんだ、ということ。

クルケシは、ネットで売買されていたり、ちょっと高いけど復刻版製品がリリースされていたりするので、これを読んで懐かしいと思ったら、ぜひもう一度手に取って欲しい。


文・写真・イラスト/柴山ヒデアキ