水戸地裁判決で原告勝訴
2021年3月18日、周辺住民ら224人が東海第2原発の運転差し止めを求めた民事訴訟で、水戸地裁は「実現可能な避難計画及びこれを実行し得る体制が整えられているというにはほど遠い状態で、防災体制は極めて不十分」として、東海第2原発の運転差し止めを命じた。避難計画の不備を理由とする原告勝訴の判決は初めてだった。
避難計画を争点と認める訴訟指揮ぶりを踏まえ、原告側勝訴の判決が言い渡される可能性が高いと以前から考えていた。だが、まさか一連の報道とタイミングが一致するとは考えもしなかった。
判決の論理は以下の通りだ。
まず、自然災害の発生は確実な予測ができないことから、放射性物質が放出されないという絶対的安全性の確保は困難であることを前提に、通常の品質管理といった第1の防護レベルから、放出による影響緩和を目的とした避難計画の整備といった第5の防護レベルまで、5層にわたる深層防護のいずれかが欠落または不十分な場合には安全とは言えないという判断の枠組みを定めた。
このうち第1~第4の防護レベルについては、「原子炉等規制法の定める許認可の要件に係る安全性があると認められる場合には、原則として欠落または不十分な点があるとは言えない」として、規制委の安全審査が適正に行われている前提で問題にはしなかった。
一方、オフサイトの安全に関する第5の防護レベルの達成については、実効性のある避難計画と遂行できる体制の整備を前提条件として示したうえで、東海第2原発の場合はPAZ(5キロ圏内)の6.4万人、UPZ(5~30キロ圏内)の87.4万人(計約94万人)の住民が無秩序に避難した場合、重度の渋滞を招いて短時間での避難は困難であり、全域の調整と合理的な避難経路の設定および周知が必要不可欠だと指摘。
30キロ圏内14市町村の避難計画を見ると、策定済みなのは人口の少ない5市町にとどまるうえ、この5市町の計画も、大地震などの自然災害による道路の寸断といった事態に備えた代替経路の確保といった検討課題が残されたままで、第5の防護レベルには欠落が認められると判断した。
役所がひた隠しにしているためやむを得ないが、判決は避難計画の策定プロセスについては触れていない。避難計画の実効性、いや信頼性の確認には策定プロセスの検証が不可欠だ。日本原子力発電は1審判決を不服として控訴しており、今回の調査報道は2審・東京高裁において審理の材料になるかもしれない。