「鈴木拓は地味で華がなく、面白くない」への復讐
――復讐というと?
スタートの時点で決まってたと思うんですよね。「鈴木拓は地味で華がなく、面白くない」という感じにさせられていた。被害妄想かもしれませんけど、どこに行っても“いないもの”として扱われている感じがしてたんです。
でも与えられたポジションを全うしていれば、いつか陽の目を見られるんじゃないか? 光り輝くスターになれるんじゃないか? 本気でそう思ってました。でもいまだに、“地味で華がないキャラクター”という殻から出ることができずにいる。そういう、なんとなくみんなからポジションを決められてしまったことへの復讐、という感じですかね。
――ご自身が目立ちたいとは、もう思わない?
そりゃ自分がプレイヤーとして呼ばれたときは、バーンと光りますよ。そこがないと、もうやめちまえよっていう話ですから。でも最近はそれよりも、人に気持ちよくなってもらいたいっていう思いしかいないですね。それこそ、どっかの宗教に入信したんじゃないかっていうくらい、一日一回は人を褒めたりとか。
――一日一回は人を褒める!(笑) 7年前とは全然違いますね。
そうですね。あのときは正直言うと、『はねるのトびら』で自分が跳ねなかったと。悔しいっていう気持ちがすごいあって、奴らを見返すための作業だったり、モロ天下取りに向かってました。
MCやってても、有吉さんがバーンといってるんで、自分だってなんとかできんじゃないかとか。今、考えたらね、ちゃんちゃらおかしい話なんですけど(笑)。そういう風なところがあって、どっかギラついてましたけど、今は若い子が飯食ってるのを見ているだけで嬉しくなっちゃったり。
――アハハハハ!
「食え、食え!」みたいな(笑)。なんでしょうね、この感覚。
――いやあ、素敵だと思います。
相方はちょっと寂しいと思ってるかもしんないですね。「二人で天下取ろう」って相方はまだ考えてると思うんですけど、俺が「もういんじゃね?」みたいな。強がりとかじゃなく、心の底から若い子たちを見てて嬉しくなっちゃうから。
――ただただ、めちゃくちゃいい人じゃないですか!
例えば楽屋とかで後輩たちと一緒にいるときに、喋りすぎて自分がその場を支配しちゃったら、そういうのはよくねぇなと思って。後輩たちに譲んなきゃと。
7年前はよくロケに行ってたんですけど、陣内(智則)さんに「拓ちゃん、まだこんなロケ行ってんの? いい加減、後輩に譲んなよ」って言われて。あ、陣内さんもそういう風に思うんだなと。……わー、クシャっていっちゃった。
――魚、逃げちゃいましたね……。
それで「ちょっと違うかぁ」ってちょっとずつ思い始めて、そんでパっと見たら陣内さんがスタジオの中で燦然と輝いてるから、「アンタはそのポジションだからいいわ!」と(笑)。結局、天下も取れなかったし、あとは飯食いながら生活水準が落ちなきゃいいみたいなところに、今、一番なってるかもしれないですね。ジジイならではの発想じゃないですかね。
文・撮影/尾崎ムギ子
7年前は毎晩コンパ。ドランクドラゴン鈴木拓が改心したきっかけとは? に続く