地上用のレーダーを無理やり搭載

それにしても、新型イージス艦はどうしてここまで巨大化したのか?

2隻の新型イージス建造計画は住民の反対などによって2020年に撤回された地上型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」(秋田、山口の陸自演習場に配備予定)の代替案として浮上したものだった。

そのため、新型イージス艦には「イージス・アショア」のレーダーとして防衛省が購入契約を結んでいたロッキード・マーチン社製の「SPY-7」がそのまま搭載されることになった。しかし、この「SPY-7」はもともと地上用で、艦艇に搭載するにはいささか大きすぎる。

にもかかわらず、無理やりに積み込もうとしたために、いたずらにサイズが巨大化したという経緯がある。導入検討のプロセスでは、安定性を重視するとして巨大で奇抜な「多胴船」(複数の船体で上部構造を支える船)案が浮上したほどだ。

また、「多機能化」を求める海自の意向も、新型イージス艦の巨大化に拍車をかけた。迎撃の対象となる中距離ミサイル(射程500~5500キロ)は北朝鮮からの弾道ミサイル(約100発)に加え、中国の弾道ミサイル(約1900発)や巡航ミサイル(約300発)、超極音速滑空ミサイルなど、多様だ。

そのすべてに対応しようと、イージス艦本来の任務としての艦隊防空任務に加え、敵からの弾道ミサイルを撃ち落とすスタンダードミサイル「SM-3」、巡航ミサイルなどを落とすための長距離艦対空迎撃ミサイル「SM-6」、さらには敵地への反撃能力としてミサイル基地などを破壊するための改良予定の「12式地対艦誘導弾」(射程約1000キロ)の開発および装備を計画している。

いわば、「弁慶の7つ道具」よろしく多様な装備を載せようと「冗長性」を重んじたため、玉虫色の「イージス搭載大型艦」計画になってしまったというわけだ。