再生可能エネルギーを利用して再起する農家
――今回の映画はまさしく、原発なき社会を訴えています。
監督の小原さんが、丁寧に時間をかけて取材しただけあって見応えがありました。登場するのが私だけでは地味ですが、再生可能エネルギーを利用してどん底から再起する福島県の農家の姿を取り上げたことはよかったと思います。放射能被害で買い手が離れ、まさに原発に生活を壊された人々です。
映画の主人公のひとりでもある二本松営農ソーラー代表の近藤恵さんは、3.11以前から続けていた有機農業を原発事故で一時は廃業。しかし、だからこそ原発のいらない社会を作りたいと、福島県二本松市で6ヘクタールの土地を使い「ソーラーシェアリング」を実践しています。
これは、映画で私も初めて知ったのですが、畑に適切な間隔を空けてソーラーパネルを設置し、発電と農業との両立を図る取り組みです。夏は適度な日除けになるので、野菜がへたらないという長所があるようです。
ただ、このソーラーシェアリングの許認可を得るのに1年半も要したといいます。それでは行政から「諦めろ」と言われているようなものだと思います。脱原発とは真逆の態度です。
それでも、農家の方々の情熱的で前を向いて歩く諦めない姿勢には感銘を受けました。特に笹谷営農型発電農場・農場長で、高校を卒業したばかりの19歳の塚田晴さんが、近藤さんと一緒に再生可能エネルギーの普及と農業に取り組む姿勢は見ていて清々しい。是非、多くの人に観ていただきたいですね。
取材・文/樫田秀樹
ドキュメンタリー映画
『原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち』
ポレポレ東中野(東京)より全国順次公開この映画にはふたりの主人公がいる。原発の運転差し止めの判決を出し、退官後の今も脱原発を訴える樋口英明元裁判長。そして、2011年の福島第一原発事故で離農したが、原発に頼らない社会を作ろうと再起した福島県の農家たちだ。映画は、脱原発に向けての理論と実践の両方を描いた。そして、再生可能エネルギーの可能性を強く訴えている。
企画:河合弘之・小原浩靖・飯田哲也 製作:河合弘之・小原浩靖 監督・脚本:小原浩靖
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