ベテラン女性弁護士を和ませたひと言
アメリカのロースクールでは、エンタテインメント法を専門的、体系的に学ぶ授業が多く開講されており、特にエンタテインメントの本場・ロサンゼルスにあるUCLAではその授業の数が非常に充実しています。
その大きな特徴は、授業の多くを、経験豊富な実務家の方々が担当することです。業界の企業内弁護士はもちろん、大手エンタテインメント企業のトップや、エンタテインメント専門の法律事務所のファウンディングパートナー(創業弁護士)も自ら講師として教壇に立ちます。たとえば、「音楽業界法(Music Industry Law)」の授業では、音楽マネジメント会社の共同経営者が講師になっており、軽妙な語り口で授業を進めます。
同授業内では講師の人脈を生かして、学生全員が現役の弁護士を相手にアーティストのレコーディング契約の模擬交渉をします。アルバムは何枚レコーディングする契約とするか、地理的範囲はアメリカのみとするか全世界とするか、などを実際に駆け引きしながら決めていくのです。
私も、ある女性弁護士を訪ね、模擬交渉を行いました。彼女は、人気のバンドをクライアントに抱えているようで、自宅兼オフィスにいくつも記念盾が飾ってありました。私が
「あのバンド、私も10代の頃によく聴いていましたよ」
と言うと、彼女は、
「あのバンドを知っているのね。私が彼らのサポートをし始めたのは、ある程度歳がいってからのことだから、10代の多感なころに彼らの全盛期を知ったあなたが羨ましいわ」
と、バンドに帯同して日本ツアーに行ったときの話を聞かせてくれました。