環境を整えれば「障害」にならない

こころの不調を感じてクリニックを受診した結果、自らに発達障害があるとわかり、そのこころの不調は発達障害が原因で起きていると知ったときの患者の反応はさまざまだという。

「もちろん、すぐには受け入れられない人もいます。一方で、これまでは職場でうまくいかなかったことを自分のせいにしてつらかったけれど、発達障害が原因だったと知って腑に落ち涙を流す人や『気持ちが楽になった』と言う患者さんもいます」

しかし、発達障害の特性を持っていることが、必ずしも本人の働きづらさや職場でのつまずきにつながるとは限らないと亀廣先生は言う。

「発達障害の特性を持っている人のなかには、働くなかで特に大きな問題が発生せず、定年まで勤め上げるような人もいます。ただ、その場合は必ずといってよいほど、その人の周囲に支援者や協力者がいたり、職場が自然とその人の特性を理解し、適切な配慮ができています。

そもそも『障害』という言葉は、『正常な進行や活動の妨げとなるもの』という意味を持ちます。つまり、周囲のサポートやマネジメントがしっかりなされていて、本人が困り感もなく能力を発揮できているならば、発達障害があっても『障害』にはならないということなんです」

発達障害が原因で、その二次障害としてメンタルヘルス不調を引き起こした従業員が復職する場合には、職場の理解や配慮が欠かせないという。

「発達障害への理解を深め、『この人にはこういう個性や特性があり、ここが苦手なのだ』と知り、個人に合った対応をしていくことが必要不可欠です。

もちろん、業務を進めるうえで『この仕事は苦手だろうから一切担当させない・任せない』ということは現実的に難しいケースもありますよね。そういう場合は、指示の仕方や仕事の与え方の工夫しだいで本人の困り感を軽減することができます。

当クリニックでも、発達障害がある患者さんが勤務する職場に対して、適切な対処方法を時間をかけてコーチングしています」