盤外での逆襲を狙うセンパイ。

女子高生が将棋で恋愛攻防戦!? 将棋ラブコメ『それでも歩は寄せてくる』の魅力!_5

うるしは歩に寄せられつつも「逆に歩をテレさせてやる!」と奮闘。「私を好きって認めたら抱きしめてやるぞ」と誘い「お前ってよく見たら男前だな」と言おうとする。ただ心の揺れは抑えきれず、赤面してしまってうまくやれない。彼女の盤外での攻めはほぼ不発……。

お気づきだろうか。うるしは恋愛初心者なのだ。

女子高生が将棋で恋愛攻防戦!? 将棋ラブコメ『それでも歩は寄せてくる』の魅力!_6

毎日対局は連戦連敗の歩。ただ彼は手を変え品を変え言葉を変えて、彼女をテレさせる。このいい意味でのマンネリズムが本作のもうひとつの魅力。「むずキュンがヤバい」「もはや両想いだよね?」「ニヤニヤが止まらない」「早く付き合え!」こんな読者の叫びが聞こえてくる。

ふたりの心の距離は変わらないように思える。およそ50cm、盤を挟んだ対局の距離のままだ。だが心地良いラブコメ成分が同じパターンで提供され続ける…と油断してはいけない。いい意味で裏切られるからだ。

本作の最大の魅力は恋がしっかり進展していくところにある。一歩ずつ、一手ずつ、着実に。読者は読み続けているうちに、うるしと歩がだんだん“いい感じ”になっていくのに気づくのだ。

女子高生が将棋で恋愛攻防戦!? 将棋ラブコメ『それでも歩は寄せてくる』の魅力!_7

物語を盛り上げるのが、うるしの同級生・マキや歩の中学剣道部の後輩・凛。彼らは、歩の幼なじみであるタケルと桜子のカップルとともに、うるしと歩の恋の進展を加速させる燃料になる。

女子高生が将棋で恋愛攻防戦!? 将棋ラブコメ『それでも歩は寄せてくる』の魅力!_8
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じっくり読むと同じような日々の繰り返しにみえて、気持ちが動くポイントが巧みに描かれているのが分かる。加えて体育祭、文化祭、初詣、バレンタインデー、誕生日といった期待のイベントも。なお、うるしと歩が10話以上離れ離れになる修学旅行編は、ふたりの学年が違うことを生かした演出がすばらしく、要注目のエピソードだ。展開、進展するラブコメを存分に楽しんでほしい。