地元に残る人が多い県は……?

愛知県は東京と大阪に挟まれているために、岐阜県と三重県の2県からしか最多進学先となっていない。しかし、愛知県は自県への進学率で言えば東京都よりも高い71.3%となっており、これは全国でも1位だ。愛知県は県内就職率も高く、教育・雇用共に自県内で完結させることができる安定した県と言える。

自県進学率が最も低いのは奈良県で、わずか14.3%。8割以上は大阪や京都など他県に進学する。奈良県には東大寺学園や西大和学園など全国屈指の進学校が集まっており、東京の難関大学に進む生徒も多い。自県進学率の低さは教育熱の裏返しなのかもしれない。

学生はどこに向かう? 統計地図から見る進学の地域差_b
図2 自県進学率

学生が流入する県、流出する県

次に、進学流動を流入と流出の差から見てみよう。

学生はどこに向かう? 統計地図から見る進学の地域差_c
図3 都道府県ごとの進学流動(対数グラフ)

このグラフは縦軸に流入数、横軸に流出数をとったもので、中央の線より左上にあれば流入超過、右下にあれば流出超過であることを示す。

流入数・流出数ともにトップなのは東京都で、差し引きで+7万4660人となっている。これは群馬県渋川市の人口と同じくらいの規模だ。
東京に次いで差し引きの流動が多いのは京都府で、約1万9000人の流入超過となっている。京都府は人口当たりの大学の数や学生の割合において全国1位となっており、まさに学生の街と呼ぶにふさわしい。

差引流動がプラスになっているのは、東京、京都のほか、大阪、愛知、福岡、宮城、神奈川、石川、滋賀の計9都府県である(多い順)。それ以外の38道県はすべて流出超過であり、進学先が一部の地域に偏っていることが分かる。
差引流動が最もマイナスなのは静岡県で、茨城、埼玉がそれに次ぐ。東京に近いことが裏目に出た結果と言えるだろう。

ここからは、いくつかのタイプに分けながら都道府県ごとに進学流動の動向を解説する。今回は差引流動と所在地域を基準として4つにカテゴライズした。
以下、①全国から学生を集める地域、②地方の中心県、③関東・関西の周辺地域、④地方の周辺地域の順にそれぞれの状況を見てみよう。