投手としては、3日目に初めてライブBP(実戦形式)に登板した。33球を投げ、のべ5人に対し安打性の当たりはゼロ。最速98マイル(約158キロ)を計測した仕上がりの早さに驚かされた。昨季は後半戦からカットボールを本格的に使い始め、テークバックを小さくしたフォームで制球力が一段と増したが、今回のキャンプではテークバックは以前のやや大きめの形に戻した印象だ。上手くなるために、変化を恐れない姿勢は日本ハム時代から一貫している。

キャンプ5日目の3月18日にオープン戦が始まり、19日のダイヤモンドバックス戦で大谷は「2番・DH」で打者として出場し、いきなり左前適時打。大谷が球場入りするだけでサインをもらおうとする人混みがすぐにでき、打席に入ると自然とMVPコールが沸き起こった。

「謎の新球種」の投球から見える心の余裕

投手としては21日のロイヤルズ戦に初登板。「チェ(チェンジアップ)なのか、スプリットなのか、中間球みたいな球」と、昨季後半から投げていた勝負球を披露した。スプリットより小さな変化でバットの芯を外せば球数が減り、長いイニングを投げられる。従来のスプリットより人さし指と中指を広げ、縫い目にかけない独特の握りは、「謎の球種」として大きな話題を呼んだ。

この21日の会見では、メジャー5年目を迎えた経験値の高さを実感する発言もあった。「謎の新球種」を含め、制球力が安定しなかったことに「アリゾナではチェンジアップとかスプリット系の落ちる球はなかなかコントロールしづらい。そこはそういう風に理解しておけば問題ない」と語った。キャンプ地のアリゾナは乾燥気候であるため、滑りやすいメジャー球がさらに滑りやすくなり、打球も飛びやすい。投手不利な環境では、細かい結果にとらわれることなく、コンディションを整えることが最優先だ。昨季は46本塁打&9勝など歴史的な活躍を見せ、心の余裕が生まれているのは間違いないだろう。

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ちなみに、キャンプ中の大谷のロッカーには複数のボディーローションや「豆乳イソフラボン」含有の乳液が常に置かれていた。肌の弾力や潤いを保つ効果があるという同乳液。確かにアリゾナの強烈な日差しの中でも、大谷の肌は荒れていなかった。

一方、筆者はコロナ禍の影響もあって2年ぶりのアリゾナ来訪だったとはいえ、肌のケアを怠り、3日目には日焼けの影響で肌の皮がむけ始めた。目も日焼けの影響か真っ赤に充血し、滞在序盤は対策に苦労した。日焼けは疲労にもつながる。同じ土俵で比較して恐縮だが、大谷がいかに入念に準備しているかがうかがえる。