国内市場規模だけでは頭打ちの「Jリーグ」と「K-POP」
中田英寿が1998年に単身イタリアに渡った頃と比べると、いまでは60人近くの日本人のサッカー選手がドイツ、イギリス、スペイン、フランスなどヨーロッパのリーグでプレイしており、日本代表が海外組で編成されるのが当たり前になった。だとしたら、内向きの日本社会でサッカー選手だけが突然変異のように「外向き」になったのだろうか。
しかし、こんなヘンな理屈を唱えなくても、この現象はもっとシンプルに理解可能だ。
欧州のクラブから声がかかるほどの選手なら、Jリーグでプレーすれば安定した出場機会と収入が得られることは間違いない(ローリスク・ローリターン)。それに対して文化も習慣も異なる海外では言葉も通じず、出場機会すら与えられないかもしれない(実際、これまで多くの優れた日本人選手が挫折を味わってきた)。
それでも多くの若いサッカー選手が海外を目指すのは、成功したときに得られる報酬(金銭だけでなく名誉や評価)が桁外れに大きいからだ(ハイリスク・ハイリターン)。彼らはこのリスクとリターンを冷静に秤にかけて、勝算があると確信できたからこそ海を渡ったのだろう。
K-POPのアイドルが世界を目指すのもこれと同じだ。韓国の1人あたりGDPはいまでは日本と肩を並べたが、それでも人口が少ないために市場規模は半分以下しかない。若いアイドルが海外に目を向けるのは、韓国人が生来外向きだからではなく、彼ら/彼女たちの才能に国内市場の規模が見合わないからだ。