『初恋の悪魔』で描く“恋愛”

これまで紹介した3作品とは、少々毛色が違う『初恋の悪魔』。林遣都と仲野太賀をW主演に迎えた本作は、“小洒落てこじれたミステリアスコメディ”を謳っている。

このドラマでフィーチャーされるのは“初恋(恋愛)”だ。これまでの“母性”や“母と子”といったテーマとは分類が違うように感じられる。しかし、坂元裕二脚本における“愛”を考えるとき、むしろ恋愛のほうが本拠地のように思えるのも確かだろう。

刑事である鹿浜(林遣都)は、とある一件から謹慎処分を受け、自宅に籠っている。兄を殉職(?)で亡くしている悠日(仲野太賀)は、署長からの命を受け鹿浜を監視することに。生活安全課の星砂(松岡茉優)、会計課の小鳥(柄本佑)も加わり、捜査権を持たない不可思議な4人がこぞって事件推理に励む展開だ。

星砂に一目惚れしたと思われる鹿浜だが、当の星砂は悠日と仲を深めていくことに。自分は“変人”であり普通とは違うと自覚している鹿浜は、これまでの人生で何度も初恋のチャンスを逃してきた、と吐露する。普通じゃない自分はやはり、恋愛には縁遠い存在なのだと自虐的に述懐するシーンには、切なさが漂う。

ドラマタイトルにもなっている『初恋の悪魔』とは、鹿浜が抱える闇やトラウマのことを指しているのだろうか。悠日の兄を殺した真犯人は誰なのか、 解離性同一性障害を持つ星砂はどうなるのか、他にも気になる点は多い。

これまでのドラマとは一線を画す『初恋の悪魔』。ただの恋愛ドラマでは終わらない予感も含めて、やはり一筋縄ではいかなさそうである。坂元裕二×水田伸生×次屋尚が繰り出す、次の一手を受け止めたい。

文/北村有