「悩みを相談できる人がいないこと」も苦しさに
新学期が近づいてくると、やはり「学校へ行きたくない」という相談は普段よりも増えるそうだ。しかし、「子どもたちの悩みを単純に分析できるわけではない」と大空さんは言う。
「そもそも、悩みというのはひとつだけではなくて、非常に重層的かつ複合的なものが多いんですよね。いろいろな悩みが重なった結果、『死にたい』『自らの命を絶ちたい』という想いを持つことにつながってしまう子が多いと感じます。
たとえば10代の子どもの自殺報道がなされると、どうしても『学校でのいじめを苦にして』などの部分が注目されがちです。ですが、たとえばいじめなど、特定の悩みだけが原因で希死念慮を持ったり自殺につながってしまうケースは、実はそこまで多くはありません。
『学校へ行きたくない』というつらい気持ちそのものだけでなく、その気持ちを相談できる人がいないという状況が、その子の苦しさを増す要因になっていたりもするんです。
小中高生の子どもたちの多くは、友達や家族がいたり学校に通っていたりして、物理的に周りに人がいないわけではありません。ですが、さまざまな問題を抱えて苦しいときに頼れる人がいない・誰にも頼れないと感じている子はたくさんいます。そういった状態を、僕たちは『望まない孤独』と呼んでいます」(大空さん)
一見元気そうに見えても、周囲の大人たちが気付けないしんどさや悩みを抱えている子どもたちも、決して少なくない。
「中高生からは、部活動に関する相談もよくあります。『部活内でトラブルがあって行きたくない』などのほか、意外と多いのが『顧問の先生』に関する悩み。部活内の人間関係よりも『対・大人』との関係性に悩んでいて、誰にも相談できないという子も少なくありません。
進学を控えた子たちからは、進路や成績など勉強に関する相談も比較的多くありますね。受験が迫り、外からの圧力だけではなく『結果を出さなければいけない』というプレッシャーを抱え、自分で自分を追い込んで苦しんでいる子も多くいます」(大空さん)