作家のイマジネーションが未来を示す
冲方 これからの地政学では宇宙空間も重要になるんじゃないですか。各国で宇宙軍を置く流れができていますし。
奥山 アメリカはシーパワーの延長で、政府主導で開発していこうという考えだと思います。イーロン・マスクの宇宙開発事業にしても、アメリカ政府がかなりバックアップしているんですよ。ただ宇宙はそこまで移動の自由がありませんし、他国からも行動が丸見えですから、海と同じように自由になるわけではありません。宇宙空間に武器を置いてはいけないというルールになっていますしね。
冲方 ゆくゆくは軍事的な覇権争いの場になりそうですよね。
奥山 そうですね。ちょっと話はずれますが、先日うちの子に買い与えた『ドラえもん』を何気なく読んでいたら、自家用人工衛星という道具が出てきて、驚いたんです。小さな衛星が飛び回っていて、のび太がボタンを押すとプラスチックのかたまりを発射する。作家さんの想像力ってすごいなと感心しました。
冲方 衛星兵器はSFでは割とポピュラーなアイデアなんですよ。
奥山 そうなんですか。アメリカ陸軍には未来予測を専門におこなう部署があるんですが、その部署が最近、テキサス州のオースティンという都市に移転したんですよ。オースティンには近年、これまでシリコンバレーにいたIT系の技術者たちが、税金の安さからどんどん移住してきていて、米軍はそういう最先端のギークと呼ばれるオタク系の人にも、協力を仰いでいるようです。
冲方 僕も日本の大手メーカーの会議に呼ばれることがあるんですが、「自由に発言してください」といわれたとおり自由に発言したら、二度と呼ばれなくなっちゃって(笑)。
奥山 それは頭が固いですね。スマートスピーカーの「アレクサ」の源流だって、SFの『スター・トレック』だといいますし。作家さんのビジョンが政治家や企業に影響を与えて、未来を作ることもあると思います。それは私たち学者にはできない領分なので、冲方さんにもどんどん発信していただきたいと思いますよ。
冲方 世界情勢を見渡すと悪い未来予測しか浮かばないのが困りものですが……(苦笑)、作家としてできることをしていこうと思います。今日はありがとうございました。
奥山 こちらこそ、とても楽しかったです。
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