【高校野球とカネ】
予算を圧迫する原因の大半は「道具費」
野球はお金のかかるスポーツ。その年間予算の大半を占めるのは道具費です。
野球部なら大量にボールを保有しているものですが、ボールも貴重な消耗品。傷みやすく、野球部を運営していくためにはいくつあっても足りず、定期的に購入しなければなりません。その他にバットや滑り止めロジン、ベース・ピッチャープレートなどの消耗品もあります。
学校から支給される年間予算は、調査したなかで最高額が550万、最低額は18万と大きな幅がありました。11万~100万が67.7%を占めています。そこへ月額数千円の部費、後援会やOB会からの援助がプラスされ、野球部の活動費の総額となります。
学校から支給される年間予算が少ない場合は、選手から部費を徴収したり、後援会やOB会からの援助で活動費を補っていると考えられます。
寮費は学校によって異なりますが、相場は月5〜6万円。そこに加えて授業料や部費の負担が保護者にかかります。
【高校野球と情報】
強化はスカウティングから始まる
高校トップクラスの野球部の多くは指導方針として「人間教育」を掲げています。学校の部活動ですから学業と両立させることになりますが、進学校のような高い次元の「文武両道」とは一線を画し、スポーツを通して人間性・社会性を身につけることを重視しています。
私立高校の強豪校の多くにはスポーツ推薦制度や特待生制度があります。有望な選手が集まりやすいのはこの制度があるためで、中学生の段階でスカウト合戦は始まっています。
野球部の監督やコーチが中学生の勧誘に奔走するケースがほとんどですが、なかにはスカウト専任に近い野球部スタッフも存在します。全国各地に散らばるOBが母校愛から情報を集め、提供する例もよくあります。
寮や合宿所を有する高校野球部は、高校がある都道府県ではなく、他の都道府県から越境という形で有望な選手を集めるケースが目立ちます。都道府県や地区の代表校でありながら、他の都道府県出身の選手が多数在籍する野球部もあります。
入学金・授業料などを免除される特待生は、日本高野連によって「年間5名以下にすることが望ましい」と要望が出されています。
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まずは「経営資源」という観点から、項目ごとにポイントを挙げてみました。
後編ではもっとポイントを絞り、高校野球のヒト・モノ・カネ・情報について意外な実態をお伝えしていきます。
後編 甲子園は「初出場校が初戦で負けるのが最も儲かる」は本当か? に続く
参考文献
『高等学校硬式野球部の経営に関する研究−甲子園出場経験のある硬式野球部を対象として−』(大西基也、百武憲一)
構成/菊地高弘 監修/大西基也(国際武道大学准教授) 百武憲一(国際武道大学教授)
写真/shutterstock