改札前のドーム天井には干支のレリーフが
東京駅構内はとにかく広く、改札内外のエリアすべてを一日で網羅するには足腰がもたない。行き倒れて「ただのしかばねのようだ」となりかねなません。そこで今回は改札の外側を中心に攻めることにしました。初めて東京駅を訪問する方や出張などで利用して時間が余ってブラつきたい方の参考になれば幸いです。
まず今回探索したルートをご紹介しましょう。
ということで、今回のスタート地点、東京駅の丸の内口です。
竣工は1914年、建築家の辰野金吾が設計したことは有名ですが、この駅舎は実は東京ステーションホテルとしても利用されていることはあまり知られていません。あの川端康成や松本清張もここに宿泊して、作品を執筆したそう。
そして、向かって右の丸の内南口改札前。
まさに絢爛豪華な造り。3階に見えます窓は併設するステーションホテルの客室に面しており、小金持ち以上であろう宿泊客が改札前の駅利用客を見下ろせる構図となっております。このダンジョンを右往左往するプレイヤーを見物しているのかもしれません。神の視点というやつでしょうか。ちなみに、2階のドーム回廊はホテル利用客でなくとも入れるので、優越感に浸りたい人はぜひ。
ここをスタート地点にした理由は、掴みとして東京駅のちょっとしたトリビアを披露しておきたかったから。それがこちらの丸の内口、八角形のドーム天井。
重要文化財にまでなったこの駅舎を設計した辰野金吾は、ここにある仕掛けを残していたとのこと。写真真ん中寄りの左右に緑の丸枠があるのですが、これらが八角形のそれぞれの角に配置されています
そして、よ~く見てみると枠内に何か動物がいるのがおわかりでしょうか?
このアップ写真に写っているのは蛇。「干支」の蛇です。
干支はご存じのように暦や方角を12種の動物で表しており、この丸の内口のドームの八角形にも方角に合わせて動物のレリーフがちゃんと飾られているのです。しかし、十二支に対して八角形。4匹余ってしまいます。そして、ぴったり東西南北を表す4匹の動物がこの東京駅丸の内駅舎にはいない。
設計した辰野金吾はなぜこの4匹の干支(うさぎ、とり、うし、ねずみ)を抜いたのか、長らく謎とされてきました。しかし、抜けた干支は、佐賀県は武雄温泉の桜門の天井に施されていたことが最近になってわかったのです。辰野金吾は東京駅と武雄温泉の設計の仕事をほぼ同時期に行っていたようで、駅舎の八角形で漏れてしまった干支を武雄温泉に入れてあげた“遊び心説”が有力なんだとか。読者の方々も、この丸の内駅舎に来ることがあれば、ぜひ天井を見上げて干支たちの浮彫細工を眺めてみてはいかがでしょうか。