「台湾有事」を想定した日米共同軍事作戦計画を、本土のメディアは完全に黙殺した

三上 去年(2021年)12月24日の琉球新報と沖縄タイムスでは、台湾有事を想定した日米共同軍事作戦の計画案があることが報道されました。この案は、1月7日の日米安全保障協議委員会で承認されてしまったので、「また沖縄が戦場になるんじゃないか」と恐ろしくなった沖縄県民がたくさんいると思います。

アメリカの対中国戦略の中で、また沖縄が戦場になることが想定されているということを、私は2015年からずっと映画や講演で伝えてきたわけですが、なかなか世の中に浸透しなかったんです。でも今回は共同通信が内部情報を得てスクープした。それで沖縄県民もようやく本当にそうなのか! と震え上がったんです。

でも同じ配信記事を全国の新聞やテレビ局の人たちも同時に見ているはずなのに、大手メディアはこの時ほとんど取り上げませんでした。だから本土の一般の人たちには今なお全然伝わっていません。それで私たちは「戦争するのが米軍だろうと自衛隊だろうと、この島を戦場にしていいはずないでしょう?」ということで、「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」を作ったんです。今メンバーは2100人を超えたぐらいです。

この危機感に対して岸田首相は「沖縄戦の犠牲者を慰霊するための、今まであったような組織でしょう」と気づかぬふりをした。沖縄県民の恐怖と怒りをまた黙殺するのかと本当に怒りを感じました。今、日本はウクライナのように、西側諸国の最前線として戦場にされるかも、という局面を迎えているんです。そうなれば、沖縄だけでなく日本全体が戦場になります。「何かあっても沖縄だけがやられるんだろう」と思っている本土の人たちの目を覚まさないと。

有田 そうですね。参議院予算委員会の質問の際には、三上さんの『証言 沖縄スパイ戦史』の名前も出して、「この本を読むと、軍隊というのは住民を守らない、ということがよく分かります」と、護郷隊(*1)のことも少し話させていただきました。

三上 たぶん、国会で護郷隊の話が出たのは初めてだと思います。ちょっと感動しました。

*1 沖縄戦で日本軍の正規部隊が米軍に撃破されて敗走した後、山中にこもってゲリラ戦を展開した少年兵部隊。陸軍中野学校出身の青年将校が彼らに秘密戦の技術を教え、指導した。『証言 沖縄スパイ戦史』には、護郷隊の生き残りの方の証言も多数収められている。

民を救わない日本の問題_3

「有事」にさせない外交こそ必要

有田 ロシアによるウクライナ侵略戦争をきっかけにして、安倍元首相らが核シェアリングとか、防衛費を2倍にするとか平然と言い出していて、野党も引きずられている。今朝も、ある有名な国会議員がツイッターに「前提として防衛費増額は当然だ」ということを書いていました。

三上 これまで平和主義者だった人までが、けっこう今、そういう発言をしていますよね。

有田 そう。とんでもない話です。私は予算委員会でも言いました。「台湾有事と言いますが、まず、中国と台湾がそういう状況にならないような外交をやらなきゃいけないし、台湾有事イコール日本有事ではありません」と。台湾に中国が侵攻しないような仕組み、環境を作るのが政治です。

辻元清美さんが最近よく言っていますが、「ロシアには強い野党がないから、(ウクライナ侵攻のような)侵略戦争が起きたんだ。それと同じで、日本にも強い野党がないから、どんどん変なほうに行ってしまう」と。まさしくそうです。その辺の歯止めが一気に崩れ始めている。

沖縄がもしミサイル攻撃されるなら、本土の横田基地(東京都多摩地区)や厚木基地(神奈川県)にも攻撃が来るわけで、「そういう深刻な事態に今私たちは生きている」ということを強調しなければいけないのに、本土ではメディアを含めて、全く鈍感ですね。

三上 本当に今が、日本が戦争に向かう流れを止める最大最後のチャンスなのに……。