推しへの愛を貫ける職業はひとつではない

メモ少年のロバート愛は、高校生・大学生になっても加速し続ける。

同じロバートファンとの交流だけでなく、ついにはロバート秋山さんの実父とも交流を始める。メモ少年のロバート愛は誰にも止められない。

また成長しているのはメモ少年だけではない。

ロバートは2011年に「キングオブコント」で優勝。3人それぞれが異なる分野で本を出すなど、トリオとしても個人としてもロバートは飛躍していった。

そんなロバートに熱視線を向け続けるメモ少年は上京し、大学生となった。「ロバートのマネージャーになる」という夢を着実に現実のものにしようとする彼は学園祭実行委員となり「ロバートだけの1時間単独ライブ」を企画。まわりを巻き込み、説得し、見事そのライブを実現させた。

学園祭の経験によって「ロバートと一緒にものづくりをしてみたい」という新しい夢を抱いたメモ少年。吉本興業だけでなく、テレビ局も視野に入れて就職活動をスタートさせる。「推しと一緒に仕事をすること」を夢見て踏み出した第一歩だった。

推しの存在が原動力となったメモ少年の就活

本書を読むと、ロバートの3人がメモ少年の進路を気にかけていたことがよくわかる。
推しとここまでの関係性を築いたメモ少年も素晴らしいが、あらゆる場面でメモ少年のことを応援し、見守り続けたロバート3人の優しさも桁違いだ。

ちなみに、これを書いている筆者もメモ少年と同様「推しと一緒に仕事をしたい!」と思い、とある求人に応募して人生が変わった経験がある。当時1番の推しであったアーティストのマネージャーという肩書を手に入れたのだ。

メモ少年は就活でもロバート愛を全面的にアピールしていたが、筆者は中途採用ということもあり推しへの愛を半分ほどひた隠しながら、面接にのぞんだ。これが功を奏したのかは分からないが、当時寝ても覚めても頭の中を占めていたアーティストが所属する事務所の一員になれたのだ。

ただメモ少年と違い、感情だけでつっ走っていたあの頃の自分は浅はかだったと振り返る。そんな筆者の胸を刺したのが、秋山さんがメモ少年に対し言った「お前の人生だから、どんな道を選んでもお前に任せるよ」(引用:※1 138ページより)から始まる助言するシーンだ。ちなみに、いつも笑いを交えながら話す秋山さんが、この時ばかりは真剣なトーンだったそう。

また、ロバート・山本博さんも秋山さんと同様『「ロバートが好き」だけでは(マネージャー)はやっていけないよ』(引用:※1 139ページより)とメモ少年に伝えている。

推しと一緒に働けたことに後悔はない。ただ「推しと仕事をする=マネージャー以外にもいろんな選択肢があるよ」と、当時の自分に強く伝えたい。この本を読みながら、そんな想いが駆け巡った。
だからこそ推しの存在から夢が生まれ、その推しから直接進路についてアドバイスをもらえる関係性って「なんて尊くて奇跡的なんだ…!」と心底思う。