あるある失敗談
――失敗談を教えてください。
中島 いっぱいありすぎて、困るんですけど(苦笑)。一番は…深夜、上野で乗ってこられたお客様が、「小岩まで」と言った次の瞬間、眠ってしまって。道はひたすらまっすぐ走るだけなので、迷うことはないんですけど、小岩の手前で、「お客様、もうすぐ小岩ですが」と声をかけても、半分、酔ったまま、「まっすぐだ」と言うだけで。
岡本 本当に、まっすぐ走っちゃった?
中島 そう(苦笑)。今だったら、一度車を止めて、お客様がちゃんと起きるまで、何度でも声をかけるんですけど、当時はまだ新人の頃で…。お客様が、まっすぐだというんだから、まっすぐ走ろうと。
岡本 どこまで走ったの?
中島 千葉の市川あたりまで走ったときに、お客様が突然むくりと起き出して、「ここ…どこ?」と。
岡本 それは…かなり、まずい……(笑)。
中島 そう…なんだけどね。ひたすら謝って、冷や汗をかきながら、小岩まで引き返して。跳ね上がった料金どころか、チップまでいただいちゃって。嬉しいような、哀しいような、情けないような…複雑な気持ちになったのを覚えています。
岡本 失敗談というか、心にダメージを負ったのは…お客様に道を教えていただきながら走っていて、降り際無言のまま、エコーカードを取られたときです。
――エコーカードというのは?
岡本 お客様が、苦情や意見などを直接、会社に伝えることができるハガキで、日付と車番が記載されているから、もう一目瞭然で。
中島 何をやらかしたの?
岡本 まごつきながらも、なんとか目的地まではたどり着いたんですけど、最後の最後、お客様から、「次の信号を越えたところでいいから」と言われたとき、「えっ!? あっ、はい。かしこまりました」と言っている間に、目の前の信号が赤になって。しかも、運悪くそのタイミングで料金メーターがカシャンと上がってしまって……。
中島 あー、よくあるパターンのやつだ…。でも、それって僕らにも、どうしようもないことなんですけどね。
――他にも、ありますか?
岡本 う〜〜〜ん。あるような気もするんですけど…。思い出せないくらい、毎日が楽しくて。タクシードライバーになって本当に良かったと思っています。
中島 そういうのを聞くと、やっぱり、女性ドライバーの方が得をしているんじゃないかとな思いますね(笑)。
取材・文/工藤晋 撮影/神田豊秀
若手ドライバー対談後編
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