ロゴを見たときの信頼感
順風満帆に見える道のりだが、近年では、コロナ禍初年度の緊急事態宣言下では、直営店の全店クローズやインバウンド需要の落ち込みによって、一時は売上を落としてしまった。
また感染拡大防止の観点から、日本アルプスの山小屋が相次いで営業休止した頃も、厳しい状況だったという。
しかし、こうした落ち込みは一時的なもので、テレワークにも使える快適なウェアやトレーニングウェアの消費志向が生まれ、さらには日帰りキャンプやハイキングユーザーも増えたことで、リバウンド需要の恩恵を受けることができた。
コロナ初年の2020年度連結業績は売上減だったものの、2021年度からは再び右肩上がりの成長に。そして、今年3月期の連結業績においては過去最高益を達成し、勢いを取り戻している。
「コロナ禍で再認識したのは卸売りビジネスの重要性でした。大都市の直営店が軒並み閉店を余儀なくされた時期に、これまで関係性を築いてきた取引先への卸売りが非常に肝となりました。卸売りがあったからこそ、大きな痛手を被ることなく乗り越えられたと思っています」
今後は、ランニングやトレーニングなどのアスレチックカテゴリーを伸ばし、新たなビジネス拡大にも挑む。
「ノースフェイスは初期の頃からトレイルランニングに注力してきましたが、今後はロードランニングの世界にももっと深く入っていきたいと思っています。例えば、今年開催予定の『湘南国際マラソン』では、マイボトルマラソンという新しい試みも考えています。世の中のトレンドとして『軽く、薄く』というスマートさが求められていますが、『軽くて丈夫』なタフネスさを追求したワークウェアの新製品も今秋にローンチする予定です。
マーケティングでも直営店ビジネスでも、常に新しい取り組みや驚きにつながるアイデアを考えながら、お客様の期待に応えられるようにしていきたいですね」
ノースフェイスに対するブランドの安心感やロゴを見たときの信頼感。
そして、「買っておけば間違いない」というブランド価値を醸成できたことが、星の数ほどあるファッションブランドの中でも、今もなお愛されている大きな要因になっているのではないだろうか。
取材・文/古田島大介 画像提供/GOLDWIN