「当事者意識」や「主体性」の欠如した集団で起こること

「当事者意識」や「主体性」は、その会社の当人である、そのビジネスをやっている当人であるという意識を、社員がどれくらい強く持っているかどうかによります。
実際に、「当事者意識」が欠如すると、仕事の押しつけ合いがはじまります。よく言う「たらい回し」は、その典型です。 「うちの仕事の範囲ではないので、誰かがやってくれるだろう」。そんな意識で仕事を押しつけ合う集団が、仕事の質を高め、生産性を向上できるはずがありません。

また、たとえばお客さんから何か要望が出たときに、「主体性」がない担当だと、「ごめんなさい、うちではそれはできないんです」のひと言で終わります。

ところが、「主体性」があると「おや、なんでそのような要望をされるのだろう?」と疑問に感じ、「ごめんなさい。それはうちではすぐにはできないのですが、どういうご事情でしょうか?」と聞いてみる。そして「前例はないのですが、一度社内で検討してみますね」などと対応します。つまり、今後に活かせる情報をキャッチできるの です。

「当事者意識」はどうやって生まれるのか

ただし、この「当事者意識」や「主体性」は、目の前にニンジンをぶら下げるといった発想などでは醸成できません。社員が、組織の理念やミッション、ビジョンに共感しているかどうかも大きく影響します。 「われわれはこういう価値をお客様に提供する」ということで共感性を高めていれば、やりがいを持って仕事にあたります。

たとえば、チェーンストアの店長が、ある他店舗での成功事例を聞いたとします。「当事者意識」がある店長であれば、その成功事例を自店に置き換えようとします。自分の店でも同じようにできないかと、工夫しはじめるのです。

このことは商品開発なども含めたあらゆる仕事の、あらゆる現場でも言えることです。

「当事者意識」が高い社員がいる職場では、「なんでなんだろう? 次はこうしてみよう。だったら、ああしてみよう」と試行錯誤を繰り返しながらブレイクスルーすることで、ヒット商品や、まったく新しいやり方などのイノベーションが生まれているのです。

では、どのようなときに、人は、仕事を「自分事」としてとらえるのでしょうか?

結論からお伝えすると、それは、仕事が会社のためだけではなく、自分のためでもあると心の底から思えるときです。
この仕事は、人生や自分のキャリアにとっても、意味や意義があり、とても価値があることだと思えるときに「自分事」になるのです。

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