「1匹いたら100匹いる」とは限らない

「ゴキブリは1匹いたら100匹いる」「ゴキブリは人めがけて飛ぶ」など都市伝説めいた話は数多く存在します。しかし、どの話も少し怖がりすぎ・誇張しすぎのように思います。

たとえば、「ゴキブリは1匹いたら100匹いる」は「そうとも限らない」というのが答えです。たしかに屋内で繁殖している場合は、100匹以上いる可能性もあります。

頻繁に見る場合は、駆除業者に連絡するのがいいでしょう。しかし、ゴキブリは居心地の良い場所やエサを求めてさまざまな場所を動き回るので、たまたま1匹だけ屋内に侵入することも少なくないのです。

ときどき、「ゴキブリなんて絶滅すればいい!」という過激派意見をインターネットで拝見します。たしかに、ゴキブリには「害虫」という側面もあります。雑食で様々な場所を歩き回るため、サルモネラ菌などの病原体の運び手になり得るのです。

しかし一方で、ゴキブリは生態系の中で分解者の役割を持っています。多くのゴキブリは雑食性で、落ち葉や動物の糞などさまざまなものを摂食し分解してくれているのです。

たとえば、オオゴキブリは朽ち木を食べることで、木が土に還る手助けをしています。また、植物の種子散布にも一役買っていて、たとえばモリチャバネゴキブリは、ギンリョウソウという植物の果実を食べ、その種子を糞として排出することで散布しています。

もしゴキブリがいなくなってしまったら、ほかの生き物にも影響が出てしまい、生態系が壊れてしまう可能性だってあるのです。

嫌われ者のゴキブリですが、彼らがどんな生き物かを知ることで、見方は大きく変わるはずです。「大好き!」とはならなくても、得体のしれない怖さは減らすことができるかもしれません。本書『ゴキブリ研究はじめました』が、その一助となれば嬉しいです。

「ゴキブリ嫌い」だったけど ゴキブリ研究はじめました
柳澤静磨
「ゴキブリは1匹いたら100匹いる」が都市伝説な理由_2
2022年7月7日
1650円税込み
単行本 192ページ
ISBN:978-4781620954
■知ると、「嫌い」はふっとんだ。
ゴキブリ数万匹を飼育研究し、つぎつぎに新種ゴキブリを発見する「ゴキブリスト」の奮闘記。
図鑑のゴキブリが載ったページをセロハンテープで閉じてしまうほど大嫌いだったのに、なぜゴキブリ研究を始めたのか?
そのきっかけには、知られざるゴキブリの姿、いわゆる“G"的なイメージとはかけ離れた、バリエーション豊かな形態・生態がありました。
amazon