●果物 
 成人になって食物アレルギーを発症する原因として最も多いのが、果物です。
 果物を食べてアレルギー症状が出るとは容易に想像しがたいかもしれませんが、成人になってから果物アレルギーを発症する人は、ほとんどが花粉アレルギーも持っています。
 果物には花粉アレルギーのアレルゲンと構造が似たアレルゲンが存在します。そのため、花粉アレルギーを発症した人の一部が、果物に含まれるアレルゲンと交差反応を起こして果物アレルギーを発症してしまう場合があります。成人に花粉アレルギーが多ければ、必然的に成人の果物アレルギーも多くなるというわけです。
 花粉アレルギーの人が果物を食べたことで食物アレルギー症状が生じる病態を、花粉-食物アレルギー症候群(PFAS:pollen-food allergysyndrome)といいます。
 では、どの花粉アレルギーの人がどの果物を食べると交差反応を起こしやすいのでしょうか。それを示したのが、表2です。
 例えば、カバノキ科(シラカンバ、ハンノキ)の花粉アレルギーの主なアレルゲンは、PR-10というたんぱく質です。花粉のPR-10と構造がよく似ているアレルゲンは、バラ科のリンゴ、サクランボ、モモ、ナシ、イチゴ、プラム、セリ科のニンジンやセロリにも存在します。そのため、カバノキ科花粉アレルギーの成人がこうした生の果物・野菜を摂取した時に交差反応が生じ、口唇や咽頭粘膜にかゆみや腫れなどの食物アレルギーの症状を引き起こしてしまうケースがよくあります。
 交差反応に関与するアレルゲンのうち、PR-10とプロフィリンは熱や消化酵素に対しては不安定(壊れやすい)なので、加熱した食品には反応しないことが多いようです。
 しかし、GRPというアレルゲンは熱や消化酵素に安定(壊れにくい)で、加熱した食
品などでも反応します。また、バラ科や柑橘(かんきつ)系の果物で症状を起こすことが多く、症状としては眼瞼腫脹(瞼やその周辺部が腫れあがる)や、食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)といった比較的重篤な果物アレルギー症状も引き起こしやすくなります。 

大人の食物アレルギーは国民的お悩みの花粉症が関係していた!?_3
表2 『大人の食物アレルギー』より抜粋

 この表2を見れば、交差反応によるアレルギーを発症しないために、どの花粉アレルギーの人はどのような果物・野菜を摂取しないほうがいいかが分かります。ところが、花粉-食物アレルギー症候群であっても、同じ果物を食べても、あるいは同じ人であっても、食物アレルギーの症状が出る時と出ない時があります。
 その要因として、反応しやすい果物が人によって違う、果物の銘柄、産地、熟度、部位によってアレルゲンの含有濃度が異なる、季節によって果物に対する感受性が変動するなどが挙げられます。例えば、花粉が多く飛散する季節になれば果物アレルゲンに対してより過敏になり、食物アレルギーの症状が出やすくなるというわけです。
 花粉-食物アレルギー症候群の人は、アレルギー発症の原因となる個々の花粉が飛散する時期には特に、症状が出やすい果物の摂取を控えることが大切です。
 また、果物アレルギーの発症原因は、花粉アレルギーだけではありません。ラテックスと呼ばれる天然ゴムの手袋を使ってラテックスアレルギーを発症した人が、果物を食べて食物アレルギーを発症する場合があります。これは、ラテックス-フルーツ症候群と呼ばれています。
 特に、オレンジ、キウイ、バナナ、モモ、リンゴの5品目は、アレルギーを発症することが多い果物として、食品表示法において可能な限り表示することが推奨された表示推奨品目(特定原材料に準ずるもの)に指定されています。 

大人の食物アレルギーは国民的お悩みの花粉症が関係していた!?_4
アレルギーは皮膚に出やすいもの(写真はイメージ) 

構成/百田なつき 

2022年3月17日
880円
新書判 200ページ
ISBN:978-4-08-721209-9
成人の10人に1人に症状あり!
これ一冊ですべてがわかる初めての解説書。

もしかして自分も……? と思ったら、以下をチェック!

□花粉症である
□自分または肉親がアレルギー体質である
□子どもの頃にアレルギーがあった
□食生活が乱れてor偏っている
□過度のきれい好きである
□最近、日光を浴びていない
□調理業や食品加工業など食物を扱う仕事をしている
□料理などで食材に触れると手がかゆくなる

ひとつでも 当てはまる場合は、成人食物アレルギーの発症リスクあり!
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