ご当地ファミレスで60年以上愛されるカツ丼
分厚いカツの上には、丼つゆではなく粘度のある餡がかかっているから、サクサクした衣の食感も長続きする。濃すぎず、滋味深く、丸くやさしい味わいで食べ飽きない。カツに飽きたらあんかけご飯としても楽しむことができて、がっつり盛りなのに、するする入ってしまう。まさに長く愛される庶民食の見本のような丼だ。
瑞浪市には他にもいくつかの食堂や、中には鮨店でさえもあんかけスタイルのカツ丼を出す店がある。雑誌で特集が組めるほど、このスタイルのカツ丼が定着している。瑞浪で降りたらあんかけカツ丼を……というより、あんかけカツ丼のために瑞浪に行きたくなるほどだ(実際、僕は加登屋食堂の”あんかけかつ丼”を食べるためだけに、瑞浪に行ったことがある)。
瑞浪駅の隣にある土岐市駅にも、名物かつ丼がある。
「ん? 1駅しか変わらないじゃないか」と思われそうだが、1駅変われば風情も変わる。もちろん丼上に乗っている"アタマ"の表情も様変わり。土岐市駅徒歩7分「ファミリーレストラン ちちや」の"てりかつ丼"というメニュー。
瑞浪の「加登屋食堂」は定食店、もしくはうどん店といった風情だが、1953(昭和28)年創業の「ちちや」は"ファミレス"だけあって店内も洋食店のような風情だ。この店にはカツ丼が2種類ある。「てり」と「とじ」だ。「とじ」はおなじみ卵とじのカツ丼。そしてもう一方の「てり」こそがこの店のオリジナルであり、土岐市のカツ丼なのだ。