俳優の場合はSAG-AFTRA(サグ・アフトラ。映画俳優組合=SAGと米国テレビ・ラジオ芸能人連合=AFTRAが合併した組織で、以下便宜的に「俳優組合」といいます)、監督の場合はDGA(Directors
Guild of America、全米監督協会)、脚本家の場合はWGA(Writers Guild of America、全米脚本家組合)といったギルドが全米規模で結成されており、これらのギルドがディズニー、ユニバーサル、ワーナー・ブラザース、ネットフリックスなど大手ハリウッドメジャー各社が加盟する映画テレビ制作者同盟(AMPTP=Alliance of Motion Picture and Television Producers、)と、包括的な団体協約を締結しています。

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俳優組合と映画テレビ制作者同盟の関係(図表作成:筆者)

俳優が労働条件を実現するためにストライキ

俳優の場合でいえば、賃金、労働時間、休憩時間などの基本的な労働条件は俳優組合と映画テレビ制作者同盟の間で締結された基本合意書(Codified Basic Agreement)に従って細かく定められており、基本合意書よりも俳優に不利な契約を結ぶことはできません。アメリカでは、有力な俳優のほぼ全員が俳優組合に所属しています。

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ロサンゼルスにある俳優組合本部(撮影:筆者)

俳優組合とハリウッドメジャーは、定期的にこの基本合意書の改定のための交渉を行います。ギルドの威力は、こうした交渉の場面で最も強く発揮されます。俳優たちは、自らの希望した労働条件が実現されなさそうだと、俳優組合のメンバー全員(すなわち、全米の俳優ほぼ全員)でストライキを断行することがあるのです。俳優だけでなく、全米監督協会、全米脚本家組合や、裏方のスタッフにより結成されたギルドまで、場合によってはストライキも辞さないという構えでハリウッドメジャーとの交渉に臨みます。万が一、1つのギルドでもストライキを実行すれば、ハリウッドのほぼ全ての映像制作が実際にストップしてしまい、業界全体が多大な経済的損失を被るので、労働条件に関する交渉は最も緊迫した場面といえます。ちなみに、日本にも日本俳優連合などの団体があり、NHKや民放各社との間で団体協約を締結していますが、同連合は法律上、個人事業主の集う事業協同組合であり、ストライキを行うことはできません。