官邸報道室との静かな攻防
5月31日に記事が掲載され、推薦状の目処も立ったことで、筆者は官邸報道室とのメールでのやり取りを再開した。表向きは申請書類の提出方法を確認しながら、「事前登録の条件を既に満たした」という筆者の解釈が正しいのか探りを入れた。以降、その際のメールのやり取りをそのまま紹介する。
官邸報道室 担当者さま
フリーランス 犬飼淳です。お世話になっております。
先日 問い合わせた総理大臣記者会見の参加申込について、確認がございます。
今週、日本雑誌協会 加盟社(集英社)が運営する「集英社オンライン」にて「総理や官邸の動向」に関する署名記事を掲載しました。
shueisha.online/culture/19508
また、掲載媒体の責任者から推薦状を頂いており、これにて4月28日に○○様にメールでご回答頂いた総理記者会見の事前登録 条件3点を満たしたと考えています。
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参考:4月28日 官邸報道室 ○○様からの返信メールに記載された条件
① 顔写真付きの身分証明書の写し
② 直近3ヵ月間の掲載記事の写し(申込書の(注)にございます通り、(社)日本専門新聞協会、(社)日本雑誌協会、日本インターネット報道協会、(社)日本新聞協会の加盟社(以下「加盟社」という)が発行する定期的刊行物等への掲載で、総理や官邸の動向を報道するものに限る。)
③ 記者としての活動実績・実態についての②を掲載した加盟社又は媒体による証明(②を発行したことの確認と、推薦状又はこれに代わるもの)
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これらの提出にあたり、改めて確認させてください。
事前登録申込書および上記3点(①②③)は全て電子ファイルをメール添付する形で提出して問題ないでしょうか。それとも③の推薦状だけは原本を郵送した方がよろしいでしょうか。お手数おかけしますが、ご回答お願い致します。
犬飼淳
出典:筆者から官邸報道室へのメール(2022年6月3日 11:10発信)
官邸報道室から提示された事前登録の条件を示した上で、1回目の記事掲載をもって条件を満たしたと解釈したことを筆者は意図的に明記した。これに対し、官邸報道室から即座(27分後)に返信メールが届いた。
犬飼 様
お世話になっております。
事前登録等の書類については、推薦状も含め
全てメールに添付いただく形で問題ございません。
どうぞよろしくお願いいたします。
官邸報道室
出典:官邸報道室から筆者へのメール(2022年6月3日 11:37発信)
官邸報道室は表向きの用件(申請書類の提出方法)に簡潔に回答した一方、事前登録の参加条件を達成したという筆者の解釈については一切、言及がなかった。
一般的な感覚であれば、ここまで明確に書いても否定しないのだから、条件は満たしたと安堵するところだろう。
しかし、総理大臣記者会見に度々参加しているフリー記者に筆者が確認したところ、「直近3ヶ月以内に各月1つ以上記事等を掲載」という条件は現在も有効なはずで、そのために申請自体を諦めたフリー記者が多数いるという衝撃的な実態を知らされた。
つまり、官邸報道室は筆者が参加条件を満たしたと誤解していると気づきながら、一切、指摘せずにやり取りを続けた可能性がある。過去のやり取りで示された「事前登録の手続きには1ヶ月ほどかかる」という見解も踏まえて、官邸報道室の狙いを推測すると以下のような流れを目論んでいたのではないか。
6月上旬:筆者が総理大臣記者会見の事前登録を申請
7月上旬:官邸報道室はきっちり1ヶ月かけて、事前登録の審査結果を筆者に連絡。登録条件を満たしていないことを理由に申請を却下。
この目論みに乗ってしまうと、登録条件を満たしたと油断した筆者は、6月には「総理や官邸の動向」に関する署名記事は寄稿しない。
すると「直近3ヶ月以内に各月1つ以上記事等を掲載」という条件が事実であると7月に入ってから気づいても、6月の記事掲載がないため、7月を1ヶ月目として改めて3ヶ月連続で記事が掲載されなければ条件を満たすことはできなくなる。つまり、5月に掲載された記事はリセットされ、条件達成は最短でも9月にずれ込むのだ。
そこですぐさま、登録条件の解釈をピンポイントで官邸報道室に確認することとした。