「内耳」から脳に気圧の変化が伝わって自律神経失調症に
——気象の変化が心身のストレスになるとのことですが、体のどこにどう影響するのでしょうか。
いくつか考えられていますが、まず、「耳」が受けるダメージです。気圧の変化は、耳の奥のほうの「内耳」で感知していることがわかってきています。
内耳は音や体の平衡感覚に関する信号を「内耳神経」を通して脳に伝えます。気圧の低下を感知すると、自律神経のひとつの交感神経が刺激され、先に挙げたような複数の症状が現れるのです。
また、内耳はリンパ液で満たされています。気圧が低下するとそのリンパ液が膨張し、内耳がむくんだ状態となって、耳閉感や耳痛、めまいをまねきやすくなります。これは「内耳性めまい」という病気の原因にもなります。
――先ほどのお話の「気象が引き金となって発症するケース」は、自律神経失調症の症状ですね。
そうです。自律神経はよく知られているように、ヒトの心身が活動時に働く交感神経と、リラックス時に働く副交感神経の2つがあります。この2つがバランスを取り合い、心拍、血圧、胃や腸の消化吸収機能、代謝、免疫機能などを調整しています。
交感神経が優位になると、心拍数が高まって心臓がドキドキする、血管が収縮する、血圧が上昇するなどして、それらが要因となって頭痛、胃痛、関節痛などの痛みに敏感になります。興奮や緊張でイライラもします。
一方、副交感神経が優位になりすぎると、けん怠感や眠気が出てきて、憂うつ感や不安感も覚えます。
気温、湿度、気圧の変化、また、災害予報による緊張や不安を覚えたときにも自律神経への負荷が強くなり、その中枢がある脳に負担がかかって、心身ともに疲れやすくなります。