5つの言葉だけを話す友達ロボットとのルームシェア

益田ミリ・著『ミウラさんの友達』を読む!【書店員花田さんのハタチブックセンター】_2
『ミウラさんの友達』
益田ミリ・著 ¥1430 マガジンハウス

大切な友達から嫌われ、ひとりぼっちになった主人公が出会ったのは、5つの言葉だけを覚えて会話するという人間そっくりのロボット。迷った末に購入を決め、二人のルームシェア生活が始まった。少し不思議で優しい気持ちをくれる物語。

 この作品はロボットの「友達」をめぐる物語だけれど、いわゆるSFではない。ロボットが突然人格を持ったりはしないし、主人公も、相手に感情がないことをきちんと理解しながらふたりでの散歩やピクニックを楽しんでいる。

 ロボットと夜の散歩に出かけたり、部屋でのんびりと自分の気持ちをロボットに話す時間は主人公にとって、心の傷を癒やすための大切な時間だったのだろう。ロボットの製作者や気の合う同僚とのやりとりもあって傷ついた心は少しずつ回復していく。

 彼女に登録された最後の言葉とは。ふたりぐらしの行く末は。物語の結末にはつい涙があふれてしまった。時には大切な人との関係がダメになってしまうこともある。そんな経験をしたことのある人にはもちろん、最近やさしさ成分が足りないという人にもおすすめしたい。あたたかな光が差し込むような読後感をぜひ味わってください。

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『カザアナ』
森絵都・著 ¥880 朝日文庫

AIの監視下にある近未来の日本に現れたのは、自然と心を通わせる"カザアナ"。科学の技術で便利になった日本は本当に豊かといえるのだろうか。コミカルなタッチながらも日本の社会問題を浮き彫りにするエンタメ小説。

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『夏鳥たちのとまり木』
奥田亜希子・著 ¥1760 双葉社

中2の夏、母親から放置されていた葉奈子は、ネットで出会った男の部屋に逃げ込んだ。だが大人になった彼女が記憶を思い起こすと、あの夏に隠された真実に気づいてしまう。心の傷を受け入れる姿に勇気づけられる1冊。

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『くるまの娘』
宇佐見りん・著 ¥1650 河出書房新社

いさかいの絶えない家庭で暮らす17歳のかんこ。とある理由から、一家は車中泊の旅をすることに。密室ならではの緊張感、息苦しさの中で彼女が見つける「家族の在り方」とは? 21歳で芥川賞を受賞した著者が描く家族物語。


2022年8月号掲載

選書・原文/花田菜々子 web構成/轟木愛美 web編成/内山英理

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