かなだいとラテンダンス

――ところで、リフトの大変さとか考えなかったんですか?

世界選手権後のインタビューで、そう訊ねた後だ。

「正直、あまり考えていなかったです。あるな、とはもちろん分かっていたけど、やります、となって、そうじゃん、リフトじゃんって(笑)。僕は天然というか、ちょっとバカなんです」

そう言って屈託なく笑った髙橋だが、垣根を作らずに挑めるメンタリティこそ、一流の証と言えるかもしれない。

「最初は安定感がなくて、自分でも毎日リフトの練習がイヤでしたもん(笑)。いつ落とすか、不安で。今はどうやっていいリフトをするか、に頭がまわりますけど、最初は落とさないように、しかなかったです」

実は、リフトでの落下も経験するなど、2年目の前半まではアクシデントが絶えなかった。大会では優雅に見せていたが、それは練習で多くの痛みや怖さを二人で乗り越えて作り上げたものだ。

女性側にとっても、リフトは落下の怖さだけではない。持ち上げられているだけに映るかもしれないが、相当に体幹を鍛える必要がある。また、わき腹を強く握られるだけに、どうしてもあざになる。それは男性には耐えがたいほどの苦痛だ。

「(アイスダンスの)アクシデントは、どっちが悪いではないんです」

村元は優しい声音で話した。

「お互いのタイミングがあって、落とされた方も落とした方もメンタリティはなかなかきついですね(苦笑)。大ちゃんは心が優しいので、落としたことで自分を責め、気にしてくれる。私の中では、アクシデントはあって当たり前なので仕方ない、そこを克服しないと。とっさの判断、大ちゃんは上手ですよ!」

二人は溶け合うように一つになった。 

2年目のリズムダンスに選んだ『ソーラン節&琴』の世界観は、後世もかなだいの代名詞として語られるだろう。大漁旗が振られる雄壮さに、ヒップホップダンスの異国情緒的律動が重なる。二人がエッジを刻むたび、会場のボルテージを高めた。

少なくとも1シーズン、現役続行を決めた二人の世界はまだまだ広がる。2022-23シーズン、リズムダンスの課題はラテンダンススタイルで、かなだいにとってはおあつらえ向きかもしれない。はたして、氷上でどんな表現を見せてくれるのか――。

「(その先が)分からないからこそ、やるというか。分かっちゃったら、やめるのかも」

髙橋の言葉は真理だ。



写真/AFLO

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