キリストの脇腹を刺した「聖槍ロンギヌス」も!

前述のエチミアジン大聖堂の宝物館にある「ノアの箱舟」のかけらのすぐ側には、伝説の聖なる槍「ロンギヌス」まで展示されている。アニメ「エヴァンゲリオン」などでご存じの方もいるかもしれないが、「ロンギヌスの槍」とはキリストが十字架に張り付けられて処刑にされる際、ローマ兵がキリストの脇腹を刺した槍のことだ。キリストの聖血が付いたことから聖遺物とされる。

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ローマ兵が「ロンギヌスの槍」でキリストを刺す場面(イメージ)

こちらも「ノアの箱舟」同様、とても実在するのが信じられないようなものだが、ガラスケースの中に他の展示物と一緒に並べられている。特に厳重に保護されている様子はなく、すぐにでも盗難にあいそうな簡易的な展示だ。

じっくり見ると、槍先が丸い!? これで人を刺したとしても、とても血など出なさそうだ。

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「ロンギヌスの槍」

実は「ロンギヌスの槍」を収蔵していると主張しているところは、オーストリアのホーフブルク宮殿など他にもある。そして、キリストの聖杯、茨の王冠の棘、聖血など、いわゆる「聖遺物」を保管しているとされる場所(おもに教会)はヨーロッパを中心に点在している。

だが、だいたいは公開されておらず、エチミアジン大聖堂のように、こうした重要なものを一般観光客が見られる場所は稀だ。

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「ロンギヌスの槍」と「ノアの箱舟」のかけらの展示室

「ロンギヌスの槍」があった聖なる岩窟修道院

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岩山と一体化したゲガルト修道院

また、アルメニアには「ロンギヌスの槍」が収められていたという岩窟修道院も存在する。
世界遺産のゲガルト修道院だ。「ゲガルト」とは「槍」の意味。現在の修道院は13世紀に建てられたが、起源は4世紀に遡る。教会堂や僧房は、機械のない時代に天然の巨岩の内部をくりぬいて造られており、多大な労力がかけられた。岩山と一体化したような造りになっており、手作業とは信じられないほど精巧な装飾が施されている。天井からは光が差し込み、とても幻想的な雰囲気を醸し出している。

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ゲガルト修道院の内部

また、この地に太古から湧き出る水は「聖水」とされ、今も人々の信仰を集めている。以前、取材で世界中の聖地を研究している大学教授の方に「聖地とは何か?」を伺ったら、自然条件として「巨石と水」がキーワードになるということだった。そこに人々の「祈り」が重なることでその場所が「聖地」化するのだとか。

とすると、ゲガルト修道院はまさにその条件がピッタリと当てはまる。伝説の「聖槍ロンギヌス」が保管されていたとしてもおかしくないような聖なる場所だ。

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教会堂のレリーフ