障害者を「雇っては利用者に戻す」36カ月プロジェクト

障害者の就労支援で事業を拡大してきた企業グループが、巨額の負債を抱えて経営破綻した。

11月2日に大阪地裁から破産手続き開始決定を受けたのは、絆ホールディングスと「JOB connect」「レーヴ」「リベラーラ」、NPO法人「リアン」の計5法人。6月の法的整理申請時点の負債総額は289億5361万円に上る。帝国データバンクによると、社会福祉事業者グループとして過去最大規模の倒産だという。

絆ホールディングスは2012年に設立され、障害者の就労支援や放課後等デイサービスなどを展開。2023年3月期には単体で約24億円の売上高を計上するなど、事業を拡大していた。

しかし、その事業の一部について、大阪市が巨額の給付金不正受給を認定した。

問題となったのは「36カ月プロジェクト」と呼ばれる独自の仕組みだ。

就労継続支援A型事業所は、一般企業で働くことが難しい障害者と雇用契約を結び、働く機会を提供する福祉サービス。利用者が一般企業などに就職して6カ月以上働き続けた実績などに応じ、一般就労への移行や、その後の職場定着に向けた支援体制が評価される「就労移行支援体制加算」という制度がある。

絆ホールディングスのグループでは、A型事業所の利用者をグループ内の企業で雇用した後、再びA型事業所に戻す取り組みを行っていた。

障害者の働く場を支える就労継続支援A型事業所
障害者の働く場を支える就労継続支援A型事業所
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大阪市は、A型事業所の利用に戻ることを前提としてグループ内で雇用する仕組みが、一般就労への定着を評価する加算制度の趣旨に反すると判断。加算対象となる就労定着者を過大に算定していたとして、不正請求と認定した。

さらに、過去3年間に加算対象となった利用者を、市町村長が認める例外的な場合に該当しないにもかかわらず、繰り返し算定していたことも問題視した。

障害者福祉の現場に詳しい関係者は、今回の問題についてこう話す。

「大阪市が認定した不正受給額は約79億円。40%の加算金を含む返還請求額は約110億円に上ります。これは大阪市が支給した分の金額です。大阪市は、ほかの自治体を含む2府5県で計約150億円の不正受給があったと認定したと報じられています。

今回の問題では、加算制度の運用が適切だったのかだけでなく、行政がこうした請求を長期間にわたってどうチェックしていたのかも検証する必要があります」

一方、グループ側は「36カ月プロジェクト」について、一般企業への就職を目指す利用者に再挑戦の機会を提供する仕組みだと説明。プロジェクト自体を不正とする大阪市の評価には異論があるとして、大阪市による返還請求処分の取り消しなどを求め、4月に大阪地裁へ提訴していた。

大阪市は3月27日、グループ4法人が運営するA型事業所について、5月1日付で指定を取り消すと発表。4月30日には運営法人の代表や元代表ら関係者5人について、詐欺容疑で大阪府警に告訴状を提出した。

6月22日、絆ホールディングスなど株式会社4社は大阪地裁に会社更生法の適用を申請。NPO法人リアンも破産を申し立てた。

しかし、10月1日に更生手続き開始の申し立てが棄却され、11月2日にグループ5法人が破産手続き開始決定を受けるに至った。