長い艶やかな黒髪が似合うO教授
O教授とは、専攻が違うから滅多に顔を合わすことがない。以前は学科の教授会が対面で行われていたため、その場で会うことはあったが、コロナ禍以降、教授会がオンライン化すると、同じ学科の人間であっても専攻が違うとなかなか対面で会う機会はなくなった。
だったら対面に戻したらいいじゃないかとは思うが、今の教授会は、ほとんど上から降りてきた案件をひたすら承認するために開かれる場合がほとんどで、真剣に何かを議論する機会はあまりないから、オンラインで十分であるとも言える。
カメラやマイクをオフにすれば、だまって内職することもできるしね(僕はやっていません。真面目だから)。
専攻会議もオンラインが多いが、僕はウイルス学専攻、O教授は細菌学専攻だから、やはり会う機会はない。
ただし年に数回、大学院生や卒業研究生の発表会というのが学科の行事としてあって、その時は顔を合わせる。そうした時、発表会の合間の休憩時間とか、発表会後の打ち上げなんかで雑談に花を咲かせることもあるわけだ。
O教授は、その長い艶やかな黒髪が非常に似合い、キャンパスの学生から、それは女子学生からも男子学生からもだが、常に憧れの目で見られる非常に美しい人なのだが、その時だけ、どことなく様子がおかしかった。
自慢の黒髪がボサボサで、おいおいそれじゃあまるでJ教授じゃねーかと思うような恰好をし、枝毛処理もままならず、色もどこかくすんでいたように思う。
顔色もどことなく悪いのだけれども、目だけはいつもの清々しく澄んだ瞳を輝かせていた。まるで理想郷を眼前に見ているかのような、そんな雰囲気をまとっていたのを覚えている。
これは、修士二年の大学院生による中間発表会が終わった後、一息つこうと缶コーヒーを手に、
「O先生、どないしたん今日は。なんかいつもと様子がちゃうけど」
と問いかけた僕に、
「そうなんですわ、聞いてくれます?」
と言ってO教授が語ってくれた話である。













