始業式の前日、電車で1時間以上かけて来た親子

ことの始まりは、店舗にかかってきた一本の電話だった。受話器を取ったのは理容師6年目の旭岡亘哉(ひのおか・こうや)さんだ。

「MEGURO BARBER SHOP 6PPONGI 目黒六」の理容師・旭岡亘哉さん(写真/旭岡さん提供)
「MEGURO BARBER SHOP 6PPONGI 目黒六」の理容師・旭岡亘哉さん(写真/旭岡さん提供)

「お父さんからお電話でお問い合わせをいただいて、『スキンヘッドって対応できますか?』と。『もちろんです!』とお答えして、その日のうちにご来店されたんです」

やってきたのは、翌日に始業式を控えた13歳の少年と、その父親だ。電車で1時間以上かけてやってきた二人は、どこか緊張した面持ちだったという。

少年は髪が抜け落ちてしまう症状を抱えており、新学期を前に「スキンヘッドにする」という苦渋の決断を下していたのだった。

「お父さんは声を震わせていて、めちゃくちゃ不安そうでした。でも、少年の方はすごく気丈で、ずっと笑顔で受け答えしてくれていて。13歳ってオシャレしたい盛りじゃないですか。その年齢で腹をくくって店に来てくれた彼の姿は、本当にかっこいいと思った。

ただ、鏡越しに彼の顔を見ていると、やっぱりどこか無理して笑っているようで、不安な内面が透けて見えたんです」(旭岡)

13歳の少年が望んで髪を失いたいわけがない。葛藤を押し殺して笑う少年の表情に、胸を締めつけられたと旭岡さんは語った。