大統領選の早期実施を求めるトランプ大統領

人事の理由が曖昧なままでは、市民は政策上の必要性よりも、大統領への忠誠や側近同士の力関係が優先されたと受け止める。

その先には選挙問題がある。米トランプ政権は和平交渉を急ぐ中で、和平案を問う国民投票と大統領選を早期に実施する案をウクライナ側と協議してきた。報道では、5月中旬までの実施を求める圧力もあったとされる。

ウクライナ大統領選の早期実施を求めていたトランプ大統領
ウクライナ大統領選の早期実施を求めていたトランプ大統領

ただ、ウクライナ法は戒厳令下での大統領選を認めていない。前線の兵士、国外避難民、ロシア占領地域の住民に投票機会をどう保障するかという実務上の問題も残る。

選管関係者は準備に少なくとも半年程度を要するとの見方を示しており、戦闘が続く現状での実施は現実的ではない。

同時に、選挙の時期が見通せないからこそ、現在の人事が重要になる。誰が軍を掌握し、誰が欧米との交渉を担い、誰が復興資金や行政機構を動かすのか。

それは戦争遂行のための役割分担であると同時に、戦後の選挙をにらんだ政治的な陣地取りでもある。

今回の首相、国防相、軍トップの連鎖的人事は、軍改革を巡る単なる路線対立ではない。戦時下に膨張した権力を誰が握り、次のウクライナを誰が設計するのかを巡る争いでもある。

ゼレンスキー氏に問われているのは、実績を上げた人物をなぜ外し、その後に誰へ権限を与えたのかを市民に説明することだ。それができなければ、「お友達内閣」は非常時を乗り切るための結束ではなく、戦後の権力を囲い込む装置だったとの疑念を強めることになる。

文/東銀座コンフィデンシャル 写真/shutterstock