過酷な撮影秘話「スタッフ同士でも裏で“ガンニバル”始めてて…」
柳楽優弥の圧倒的な熱量に刺激を受ける一方で、中村が現場で自らに課していた役割は少し違うものだった。
「僕はムードメーカーとして、俳優とスタッフをつなぐことを大切にしていました」
その根底にあるのは、「萎縮しない」という姿勢だ。
「どんな現場でも、萎縮することは絶対によくない。それは自分も、共演者も。萎縮すると、本来の実力を発揮できなくなるだけでなく、この人間社会において、何かのはけ口のターゲットにされてしまうかもしれない。雰囲気が良ければミスすらコミュニケーションになりますよね。だから僕は、俳優としても監督としても、現場をよくしたいんです。だからもし、萎縮してそうな人がいたら、ちょっかい出しまくりますよ(笑)」
いい芝居は、カメラが回っていない時間から始まっている。その考えを強く実感したのが、『ガンニバル』の撮影現場だった。
「基本、殺気立っている現場だったので、表立ってワイワイやると怒られちゃう。だからバレないように、わちゃわちゃしてました。後藤家のインスタのオフショットだって、こっそり撮ってたんですよ(笑)」
過酷な撮影が続けば、スタッフ同士が衝突することも珍しくはない。
「普通に喧嘩もありましたし、疲れてくるとスタッフ同士も裏で“ガンニバル”を始めるんですよ(笑)。でもスタッフの“ガンニバル”に出演者まで引っ張られちゃダメなんで、あえて出演者同士でラフな会話をしたり、怒られて落ち込んでるスタッフを後藤家のみんなでタバコに誘ったり。そういう小さな動きって本当に大事だなって思いました」
中村にとって『ガンニバル』は俳優としてだけでなく、監督として作品づくりに向き合う上でも、「現場の環境づくり」の重要性を改めて実感した作品となった。
そして、そこで出会った仲間とともに、中村は今、次の創作活動に取り組んでいる。
来年2月に、第37回下北沢演劇祭で、身長145センチの中村、身長197センチの澤井一希(『ガンニバル』“あの人”役)、体重160キロの米本学仁(同作で後藤真役)によるユニット「規格外」として舞台に出演予定で、演出も自ら手がけるという。
「ご存じ、後藤家でご一緒したハイ&ロー&ワイドの3人です(笑)」
舞台の戯曲を執筆するのは今回が初挑戦だといい、その先には、俳優だけにとどまらない、彼が思い描く未来がある。
「一番やりたいのは、やっぱり映画づくりなんです。そのために今、原作になる小説を書いています。10年後には、俳優も続けながら、監督としてもしっかり仕事があって、収入も安定している状態になっていたいですね(笑)」
その穏やかな表情からは想像できないほど、創作への意欲は尽きない。作品の中では何度も壮絶な目に遭ってきた男は、現実では誰も萎縮しない現場づくりを夢見て、今日も新たな物語を紡いでいる。
取材・文/木下未希 撮影/村上庄吾













