「失敗」で終わらせない…閉店から始まる次の一杯

ラーメン店の閉店というニュースだけを見れば、「失敗」という言葉で片付けられてしまうかもしれない。

しかし、「札幌 六坊」の物語は、それほど単純ではない。人気メニューを専門店へ昇華させ、多くのファンを獲得しながらも、札幌ラーメン特有の油煙という思わぬ壁に直面した。

24年の経験を持つ店主でさえ、「まだ知らないことがあった」と認めるほど、ラーメンという世界は奥深い。

そして、その経験を糧に、新たなブランド「ROKUBO TOKYO」が生まれようとしている。

取材を終えて感じたのは、樹庵さんは閉店の話をしているようで、その実、未来の話をしていたということだった。

「24年間やっていても、まだ学ぶことがある」

その言葉を口にした時の表情は、ベテラン職人というより、新しいラーメンに出会った若い作り手のように生き生きとしていた。

「札幌 六坊」は幕を閉じる。だが、この1年3カ月が渡辺樹庵さんにもたらしたものは、決して小さくない。失敗ではなく、次の一杯をもっとおいしくするための経験。

そう考えれば、「札幌 六坊」の物語は、ここで終わりではない。「ROKUBO TOKYO」という新しい挑戦から、その続きが始まる。

取材・文・写真/井手隊長