企業分析の時代から構造分析の時代への転換
あらゆる産業へ浸透し、それぞれの業界の常識、収益構造、競争原理を根底から変えていく。だから重要なのはAIではなく、「X」のほうなのである。
AIそのものが価値を生むのではない。AIと融合した産業が新たな価値を創造し、その変化に適応した企業だけが次の時代の勝者になる。
投資の世界も同じである。これまで投資家は売上高や利益率、PERやPBR、ROEといった数字を比較しながら企業を分析してきた。もちろん、それらは今後も重要な指標であり続ける。しかし、それだけでは勝てない時代が始まる。
その企業が属する産業はAIによってどう変わるのか。競争相手は誰になるのか。利益率は改善するのか、それとも崩壊するのか。AIは単なるコスト削減なのか、新たな収益源を生み出すのか。
企業分析だけではなく、産業構造そのものを読む力が求められる時代へ移りつつある。私はこれを「企業分析の時代から構造分析の時代への転換」と考えている。
現在の株式市場では、AI関連株に世界中の資金が集中している。しかし、本当に見るべきなのはAI企業そのものではない。AIによって利益構造が劇的に変わる企業である。
AIによって人件費が大幅に削減される企業、AIによって新しいサービスを生み出す企業、AIによって生産性が飛躍的に向上する企業。
その一方で、AIの普及によって競争優位を失い、価格競争へ巻き込まれる企業も少なくないだろう。勝者と敗者を分けるものは、企業の歴史でもブランドでも規模でもない。変化を受け入れ、自らを変革できるかどうか、その一点に尽きる。
企業同士の競争ではなく国家資本主義同士の競争
さらに言えば、AI革命は企業だけの話ではない。国家そのものを変え始めている。半導体、データセンター、電力、通信網、量子コンピューター、人材育成。これらはもはや一企業の経営課題ではなく、安全保障そのものである。
AI覇権を握る国が経済覇権を握る時代へと世界は急速に向かっている。各国が巨額の補助金を投じ、AI産業を国家戦略の中心に据える理由もそこにある。AIを巡る競争は企業同士の競争ではない。国家資本主義同士の競争なのである。
私はこれまで、円安大誘導、新NISA、さらには「壮大なインサイダー国家」という視点から、国家戦略とマーケットの関係を書き続けてきた。市場は決して自然現象だけで動いているわけではない。













