水戸の伝説の不良が教えてくれた『アイカタ』の本質

—『アイカタ』の番組MCの加藤浩次さんが今シーズンで印象に残った組だと挙げていた春風亭一之輔さんの回。これはスクープといっていいほど、あの一之輔さんがどこにも見せたことのない表情を見せていますよね。

片岡飛鳥(以下同) 落語家である一之輔さんのアイカタが写真家のキッチンミノルさんというのが新鮮。近寄りがたいイメージもある一之輔さんをあんな柔和な顔にさせているんですよ。あの写真にはキッチンミノルというアイカタの人間力が表れている。

要は自分のレンズの前で被写体にどんな顔をさせられるかで、カメラマンとしての腕が決まるわけです。そういう空気が作れる「力」を感じますよね。天才落語家「一之輔」ではなく、(肩書きもキャリアも関係ない)カタカナである人間「イチノスケ」前編参照の表情が出るというか。

屈託のない笑顔を見せる落語家の春風亭一之輔(左)と写真家のキッチンミノル(©NHK)
屈託のない笑顔を見せる落語家の春風亭一之輔(左)と写真家のキッチンミノル(©NHK)
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—そして加藤さんと春菜さんの「照れ屋論争」も大いに盛り上がる第3回(7月14日放送予定)は「水戸の伝説の不良」が登場します。

加藤さんとタメ歳(57歳)の元不良が「妻にサプライズしたい」と言い出すんですよ。あの回はスタッフの会議で非常に議論になった。よく私は冗談半分でディレクターたちに「サプライズとか平成のテレビじゃないんだからもうやめない?(笑)」って言ったりするんですけど、「今日はご本人がいらしてます!」とか「実は手紙を書いてきました!」みたいなやつ…すごく恥ずかしいんです(笑)。

自分がさんざん平成のテレビをやってきたくせに言うんですけど、この『アイカタ』という番組においては、そのサプライズが“撮影者の本当の思い”に端を発してなければやってはならないと思っていて。

—テレビ発信ではなく、本人発信。

まず、水戸の伝説の不良はガチの照れ屋で。絶対にそんなことやらないはずの夫が『アイカタ』という番組に背中を押されて、妻にサプライズを仕掛ける。「『アイカタ』のせいにすればできるような気がする」って。やってることは一見、平成のテレビみたいなサプライズなんですけど、不器用に生きてきた男が自分で考えて、準備して、実行して…妻を泣かせちゃった。

テレビのせいにできたからこそサプライズができたという元不良の夫(左)と妻(©NHK)
テレビのせいにできたからこそサプライズができたという元不良の夫(左)と妻(©NHK)

—面白いです。平成のテレビってある種、傲慢で一方的に演出サイドが「こういう画にしたい」っていう作り方だったと思うんです。

ハイ、死ぬほどたくさんやってきました(笑)。ただそんな傲慢な平成テレビの関係者として自戒を込めてですが。少なくともこの『アイカタ』では「そこに出演者の思いはあるのか?」ってことが大事なんじゃないかと。昔はやりたくもないことをやらせるテレビもたくさんあったんじゃないかと思います。

『めちゃイケ』は特に一般の方も巻き込んでいたし…「ヨモギダ少年愚連隊」(※注1)みたいな。まだ10代で多感だったヨモギダ君はどこまであれを楽しんでくれてたのかなって今になって心苦しくなったり。

そういう意味でこの『アイカタ』は過去の自分との会話になってるところもあります。もちろんコンプライアンスは日々考えていますが、会議室で「クレームの可能性があるからNG」と言われたところで頭も身体も反応しないというかピンとこないことがある。

だけど『アイカタ』っていうリアルなフィールドに一歩足を踏み入れると、【とにかく撮影者とアイカタの気持ちを優先する】という明確な物差しができるから、自然と“大切な一線”は守れるようになっていく気がするんです。