大きな目標を掲げたことまで罰してはいけない

もう一つ注意したいのは、高い目標を掲げた人ほど損をする評価制度にしてはいけないということだ。

仮に森保監督が大会前に「ベスト32が目標です」と話し、その通りの結果を残していれば、形式上は「目標達成」になる。

しかし、それで日本サッカーの成長を促せるかといえば、疑問が残る。

会社でも、確実に達成できる数字だけを掲げた管理職が高く評価され、「世界一を目指す」と宣言した管理職が未達を理由に低く評価されるようになれば、誰も大きな目標を口にしなくなる。

高い目標を掲げるなら、そのためにどんな戦略を立て、どのような人材を集め、どこまで前進したのかを説明する責任がある。

森保監督についても、問われるのは優勝できなかったという事実だけではない。

「理想の上司」とも言われることの多い森保監督 写真/JMPA
「理想の上司」とも言われることの多い森保監督 写真/JMPA

なぜブラジル戦の終盤に勝ち越されたのか。前回大会から何が改善され、何が足りないままだったのか。選手選考や交代策、コンディション管理に問題はなかったのか。

こうした検証を曖昧にせず、次の責任者が利用できる形で残すことも、長期政権を率いた監督の大切な仕事になる。

日本サッカー協会は森保監督に対し、2027年1月から2月にかけて行われるアジアカップまで指揮を続けるよう打診し、JFAから正式発表はないが、本人も受諾したと報じられている。アジアカップ後は新監督へ交代する方針とも伝えられている。

会社でいえば、これは事業部長として新たな4年間を任された「正式な再任」ではない。

次の責任者へスムーズにバトンを渡すための、期限付きの続投に近い。この半年で最優先すべきなのは、自分の続投に有利な成果をつくることではなく、次の4年間に使える財産を残すことだ。