世代を超えた相互信頼
2回にわたる選手ミーティングの効果はその他にもある。
一つが、中村敬斗への影響だ。このW杯で初出場を果たした中村は、オランダ戦でゴールを決め、チュニジア戦では鎌田の先制点をアシストするなど、攻撃の起点として大車輪の活躍を見せている。
中村は長友の果たす役割をこのように表現する。
「ワールドカップを何度も経験している選手がチームにいてくれて、体験談を語ってくれるというのは心強いです。僕なんかはW杯に出るのが初めてだったので、どういう気持ちで臨めばいいのかというのはあまりわかっていなかったので。ただ、長友選手が語ってくれたことで、気持ちの整理がつきました。ああいうことを話してくれるのは、“めちゃくちゃ”ありがたいですね」
過去のW杯における日本代表の戦いぶりを振り返ってみると、やはり、初めて臨む大舞台で緊張してしまい、思うようなパフォーマンスを残せなかった選手は多かった。
もちろん、今回の中村の活躍は彼の努力と、この数年間でブラジルやイングランドのようなW杯優勝国との試合で、決定的な活躍をしたことで得た自信も大きいはずだ。
ただ、そんな中村が、ここで長友の影響の大きさを挙げるのだから、相当なものだ。
もう一つは、後藤啓介への影響だ。ミーティングで自身の献身を長友に認められた後藤は、後に「めちゃくちゃ嬉しかった」と素直に喜びを語った。
その理由は以下のようなものだ。
「ああやって、見ていてくれる人がいたのでね。佑都さんもピッチに立てていないのに……。あのようにしっかり見ていてくれるというのはやはりベテランだなと思いますし、本当にありがたいことだなと思います」
後藤はこれまでにも多くの目標があった。W杯に出場すること(チュニジア戦で達成)、チームを勝利に導く活躍をすることなど……。
ただ、今は、そこに新たな目標が加わった。
「次は佑都さんと一緒にピッチに立って、佑都さんからのボールで(ゴールを)決めたいと思います!」
21歳の若手が39歳のベテランと共にピッチに立ち、アシストからゴールを決めるという、感涙もののビジョン。それは、単なる個人の野心ではなく、世代を超えた信頼と高め合いの象徴だ。
チュニジア戦で後藤が途中出場した際、長友がその背中を優しく叩いて送り出した光景は、新たな師弟関係の誕生を象徴していた。
信念を貫くことと、歩み寄ること。
組織においてこのバランスを取るのは容易ではない。長友は自らの豊富なW杯経験という「信念」を基盤にしつつ、若手や出場機会の少ない選手たちの声に耳を傾け、彼らの貢献を積極的に認め、チーム全体で共有する「歩み寄り」を選んだ。
その結果、生まれたのは、選手たちの心地よさと感謝、そしてより強固な一体感だった。
監督・コーチ陣の準備と相まって、選手主体のこの対話と相互認識の文化が、現在の日本代表の大きな強みとなっている。
6月26日にはグループ最終戦でスウェーデンと対戦する。
日本はすでに勝ち点4を手にし、決勝トーナメント進出へ大きく前進しているが、さらなる高みを目指すには、この結束を維持し、進化させていくことが不可欠だ。
長友の進言から始まった一つのミーティングが、チームに与えた「気のゆるみゼロ」の姿勢と、世代を超えた相互信頼。それが、日本代表がW杯の舞台で真に躍進するための、静かだが確かなカギなのである。
取材・文/ミムラユウスケ













