県警に残る二つの疑問
「大山容疑者は犯行から3日ほど経ったと思われる5月16日夜、現場から20数キロ離れた高砂市内の路上で寝ており、高砂署員が署に任意同行していました。
その時に大山容疑者は『人を殺した』『たつの』と口にしましたが、県警は事件を認識できず容疑者を放したんです。
県警は『日時や場所などの具体的な情報を説明せず、話がかみ合わなかった』と説明していますが、高砂署は話が出た後に大山容疑者を事件現場の隣の、容疑者が昔住んでいた家の近所まで送り届けていました。当時容疑者の所持金は550円しかなかったといいます」
約10年前に離れ、今は住んでいない家になぜ容疑者を送り届けたのかは不明だ。
この時点で事件は発覚しておらず、大山容疑者の行動は「自首」にあたる可能性もある。
検挙の決定的な機会を逃した県警には、もう一つ不審な点がある。
「初動捜査の遅れです。2人が刺されて自宅で亡くなっており、玄関は施錠されておらず凶器が現場になければ心中とは考えにくい。
2人が殺されて容疑者が逃げた重大事案であることは当初から濃厚で緊急配備を敷いてもおかしくなかったのに、県警が殺人と断定して捜査本部を設置したのは遺体発見の2日後です」(全国紙社会部デスク)
県警内では2遺体の発見直後から「人を殺した」と話した男を現場の隣家に高砂署員が送り届けていた事実は問題になっていたとみられる。
しかし「殺人」と断定し本格捜査に入ることの公表がこれほど遅くなったのはなぜなのか。
そして、この初動捜査の遅れが最後の逮捕の機会を失わせる。
大山容疑者は母子の遺体の発見から捜査本部設置までの2日の間に死亡していたのだ。
「容疑者は5月20日夕、今回遺体が見つかった川の上流の河川敷に一人でいるところを住民に目撃されていました。けげんに思った住民が撮った写真が県警に提供され、県警はこの写真も公開し目撃情報を募りました。
しかし川に浮いていた容疑者の遺体を解剖した結果、死亡したのはまさに最後に目撃された5月20日ごろと分かりました」(地元記者)
トラブルがあったとの情報もない昔の隣人宅を襲い、金を奪うわけでもなく2人の命を奪ったとみられる大山容疑者。その死によって動機を知る手掛かりは失われた。
兵庫県警では最近、前本部長が数万円の不適切な接待を受けていたことや、交番で警察官の男女が性行為を繰り返したことなど、次々と問題が発覚している。
今回の件は、治安を維持する能力にも不審を抱かせる特大の不祥事といえる。事件解決に失敗した原因を徹底的に解明しなければ、信頼回復は難しいだろう。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班













