李逵に全部持っていかれた
──第四巻まで来ました。この巻はいかがでしたか。
木村達成(以下同) なんといっても李逵ですね。笑ってしまいました。李逵がどういう人間かよくわかりました。
──乱暴者だけどピュア。陰謀とか巡らせている人がいる中で、ああいうキャラクターが出てくると救われますね。
僕が演じている史進も真っ直ぐなところは李逵と似ていますが、史進がひたすら強さを求めているのに対して、李逵は何も考えていない。ここに史進よりももっと真っ直ぐな男がいたな、と思いました。
──李逵のエピソードで印象に残ったところはどこですか。
ここのくだりが好きですね。母親を失った後の宋江との会話です。
「宋江さん、ひとつ訊きてえ」
「なんだ、李逵?」
「死ぬのは、つらいのか?」
「つらくはない、と私は思っている。決してつらくはないと。ただ、土に還るだけなのだ」
「ほんとか?」
「私は、そう思っている。つらいのは、残された人間の方だ」
「俺はつれえよ」
「残されたからだ。それが、生きるということなのだ、李逵」
(北方謙三『水滸伝』第四巻「道蛇の章」集英社文庫 p294)
あとは李逵が魚をよこせ、と言い張って漁師たちともめた時に、舟に乗った男に挑発されて、舟に跳び乗るところ。李逵は泳げないのに、男と二人で水の中に落ちるんですよ。
武松が歩み寄り、李逵の腹に足を載せると、踏んだ。李逵の口から、盛大に水が噴きあがった。よほど飲んだのか、武松が踏むたびに水が噴きあがる。五、六度は続いただろうか。眼を開けた李逵が跳ね起き、周囲を見回した。
(北方謙三『水滸伝』第四巻「道蛇の章」集英社文庫 p327)
芸人さんみたいですね。ピュッ、ピュッて水を噴き上げる。笑えました。
──その漁師が張順。張順が水の中では無敵だと知り、「陸の上では、俺。水の中では、おまえ。そういうことだ」と李逵が言うのもおかしいですね。『水滸伝』には笑えるところもある。
必要ですね。暑苦しい男たちが多過ぎて、おなかいっぱいになってしまうから、息抜きになる場面があるとホッとします。
李逵と武松が師弟関係みたいな感じになるのもいい。武松が、俺を兄貴と呼べと言った後の、
「兄貴の言うことは、絶対なのだぞ。死ねと俺が言えば、黙って死ぬのだぞ」
(北方謙三『水滸伝』第四巻「道蛇の章」集英社文庫 p308)
という台詞とかが、いいなーと思います。それから、李逵が母親を襲った虎の腹を裂いて、手を突っ込んでかき回すところは泣けました。
李逵と出会ったことがきっかけで、宋江たちが張順たちともつながっていくとか、志の波紋が広がっている感じがしてきたのも面白い。梁山泊が起こそうとしている叛乱については、スタートラインに立ったような、まだ立ってはいないような微妙な感じもありますが、人と人とがつながり始めていると思いました。
──江が旅をすることで、仲間が増えていく。しかも宋江の旅は武松と李逵を連れていくという、水戸黄門状態の漫遊の旅になってきました。
『水戸黄門』の助さん、格さんと比べると、武松と李逵はかなり強いですけどね。
──二人とも素手で戦いますね。
強さだけなら史進のほうが強いと思います。史進は棒術の使い手だから、木の棒は折られても、鉄の棒なら勝つでしょう。でも、史進が宋江と旅をするかと考えると、どうだろう? 耐えられないんじゃないかな。「俺がやりたかったのはこういうことじゃない」って言い出すような気がする。史進は、おのれが強くなるために生きていたいから、すべてのことを、自分が強くなれるかどうかを基準に決めるんですよ。














