幸せでいることの秘訣は「素朴」にあった

こんな私の考えを一網打尽にするようなことが『プルタルコス英雄伝』に書かれていた。簡単に言うと、こんな感じだ。「スパルタ人らの人生が平穏だったのは、望みが素朴だったから」

まさにこれだ。「望みが素朴だったから」だ。

私がチェコの人々にもどかしさを感じたのは、私も知らないうちに「効率よく稼ぐことがいい」という考えに染まってしまっていたためである。

ここでの「素朴」は、単純とか小さいという意味ではない。諦めて放棄したという意味でもない。現実を正確に把握し、その中で最大限自分の幸福な人生を楽しむということだ。

あのカフェのマスターはお金を稼ぐことではなく、1日を誠実に、幸せに生きることを大切にしていた。自分の仕事を愛し、自分が淹れたコーヒーに誇りを持ちながら、お客さんたちと交わる時間そのものを享受していたのだ。

『プルタルコス英雄伝』(ちくま学芸文庫、1996年)
『プルタルコス英雄伝』(ちくま学芸文庫、1996年)

私たちは普通、「働いて稼いだお金で、後々、幸せな時間を過ごそう」と考える。ところがそうはいかないのだ。後になっても幸せな時間は訪れない。今まさに幸せでいないといけない。

「今まさに幸せになるために仕事を辞めて散財すべきだということですか?」と訊く人がいるかもしれない。無論そうではない。仕事で幸福を見つけてこそ、今を幸せに生きることができる。私たちのほとんどは仕事をして生きているからだ。考え方さえ変えれば、仕事をしながらいくらでも幸せになれる。